神経質礼賛 1389.やまいだれ
医学用語には難しい漢字がある。森田正馬先生関係の本を読んでいると、森田先生が医師になられた当時東京大学精神科の医局があった巣鴨病院についての記述があり、その前身は「東京府癲狂院」だという。ハテ、癲という字は何て読むのか。考えてみると癲癇(てんかん)の「癲」だから「テン」でよいのだろう。
部首が「やまいだれ」の70余りある漢字の中で一番画数が多いのがこの24画の「癲」であり訓読みは「くるう」なのだそうだ。ちなみに次に画数が多いのが23画の「廱」(ヨウ)、訓読みは「はれもの」である。『家康その一言』(p.76-77)に書いたように、徳川家康は織田信長の死後、秀吉と対立していた頃にこの廱のために死にかかった経験がある。さらにその次に画数が多いのが白癬(92話)でおなじみの22画「癬」(セン)、訓読みは「たむし」「ひぜん」である。「いんきんたむし」は減っているけれども、水虫や足の爪白癬に悩んでいる人は決して少なくはない。
一方、画数が一番少ない「やまいだれ」漢字は7画「疔」(チョウ)、訓読みは「できもの」であり、顔面のできものを面疔と呼ぶ。次が8画「疚」(キュウ)、訓読み「ながわずら(い)」「やま(しい)」、と「疝」(サン、セン)、訓読みは「せんき」で下腹部痛を意味し疝痛(センツウ)という言葉はよく使われる。
「神経質の悪い癖は、何か苦しい事があると、まずこれは、自分に限った特異の事と独断する」と森田先生が言われたように、神経質人間は自分の悪い所探しが得意であり、どうかすると「病気」を自分で作ってしまいがちである。やまいだれは病人が寝ている姿の象形文字だと言われる。いろいろ気にはなっても、やまいだれをはずして健康人らしく仕事をしていけば病気ではなくなっているのである。
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母がまだ幼かった頃、ご近所にとてもきれいな顔立ちの青年がいたそうで、この人は心の病をお持ちでした。近所の人達はみな「てんきょうさん」と呼んでいたそうです。今回の記事で母との古い会話を思い出しました
投稿: たらふく | 2017年5月27日 (土) 14時00分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
私たちの世代では聞いたことがない言葉ですが、お母様の幼少時にはあった言葉なのですね。貴重な情報をありがとうございました。
投稿: 四分休符 | 2017年5月27日 (土) 20時54分