神経質礼賛 1412.電子カルテの時代
病院を受診したら医師がせっせとパソコンに向かってカルテを入力している、という場面に出くわした方も増えていることと思う。病院や診療所では電子カルテ導入で紙カルテが消えつつある。患者さんの発言をたくさん書かなくてはならない精神科では導入が遅れていたが、精神科病院でも徐々に導入する流れになってきている。私の勤務先の病院も近々導入の方向で動き始めた。精神科病院の電子カルテシステムを開発した実績のある会社の担当者から説明を聞いたりデモ機を見学させてもらったりしている。
電子カルテ導入の恩恵を受けるのは事務サイドだろう。カルテは5年間保存が義務付けられているが、風邪やちょっとしたケガでかかることもある内科や外科と異なり、精神科は治療が長期にわたることも多く、障害年金申請の関係で20年とか30年前の受診状況の書類記入を求められることもあるため、事実上、半永久保存しなくてはならない。だから保管している外来カルテや入院カルテは膨大な量になり、管理する事務員は苦労している。外来患者さんでも長年通院している人のカルテは分厚くなってしまうため、分離して古い部分は別に保管することがある。それが電子カルテになってくれれば全く場所を取らず、探し出すのも容易になるし、行政から種々の統計調査データを要求された時にも集計がしやすくなる。また、カルテを医師・看護師・ケースワーカー・作業療法士・事務員など多職種で共有することが容易になる。しかし、メンテナンス費用がかかるし、導入する際の手間が大変である。そして最大の問題はカルテを入力する医師の負担である。今までは患者さんの顔を見て話を聞きながら、急いで書きなぐっていた。パソコンに入力するとなると、慣れた若い医師はいいとして、中高年の医師はキーボードとにらめっこになる恐れがある。特に新患さんの入力量は多いので、限られた時間で入力するのは厳しい。心配性の私としてはいろいろ気になるけれども、導入されたらされたで何とかやっていくしかない。「境遇に従順なれ」(828話)しかないのである。
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