神経質礼賛 1447.個人消費の低迷
新聞の1面トップに「GDP年1.4%増 7期連続プラス17年ぶり」という見出しが踊る。株価もバブル崩壊以後の最高値を記録した。政府はアベノミクスのおかげと喧伝する。しかし、景気が良いという実感はなく、個人消費は低迷したままである。日本において最大の株主は実は日本銀行であるという新聞記事もあった。日銀が金融緩和のためと称して投資信託などに大量の資金を流して結果的に株を買い支えているのである。これではイカサマ賭博のようなものだ。マイナス金利政策という資本主義経済の基本を破壊するような無理をしているから、銀行業界はサラ金まがいのカードローンに力を入れざるを得なくなった。それでも、青息吐息らしく、今週、大手銀行グループが相次いで数千人規模の大リストラ計画を発表した。本当の景気回復ではなく、偽装景気に過ぎないのである。それを見透かして、儲かっているはずの企業も内部留保に余念がない。
あるニュース番組で個人消費が低迷している原因を追究していた。働く主婦のインタビューで、「これから子供の教育費がかかるから、食費は週1万円以内に抑えている」という話があった。てっとり早く節約できるのは食費と衣料品費だけれども切ない話である。奮発して車を買おうとか家を建てようどころではない。
個人消費が低迷している最大の理由はやはり将来の不安ではないかと思う。少子高齢化がどんどん進み、現在の社会保障レベルを維持するには消費税を20%や25%に上げても追いつかないという話もある。このままでは年金も破綻するから支給水準をどんどん下げざるを得なくなるのは目に見えている。若い人たちにとって年金は「ぼったくり詐欺」である。そういう都合の悪い真実はひた隠して、バラマキ政策だけを喧伝して政権を維持している政治家たちを見ているとますます不安になるものである。
しかしながら、モノをたくさん買えることが幸せとも限らない。物の性(しょう)を尽くす(350話)・・物を無駄なく大切に使いその物の価値を最大限に引き出す・・は森田正馬先生が実践し、お弟子さんたちや患者さんたちに身をもって教えた生き方である。決してケチなのではなく、森田先生は郷里の小学校に多額の寄付をしていたし、慈恵医大に奨学金を出したりもして、人のためになるように特に将来の日本を担う若者のためにお金を使っていたのだ。それに、あまりお金をかけずとも工夫すれば、楽しめる趣味はあるし、教養を高めることもできる。質実剛健の森田的生き方はこれからの時代を生き抜いていく上で役に立つのではないかと思っている。
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