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2017年12月 4日 (月)

神経質礼賛 1452.席の向き

 寒くなって風邪の季節になってきた。外来患者さんの話を聞いていると、「風邪をひいていて咳が出るんです」と言いながらゴホゴホ咳をしている人がいる。「一週間前にインフルエンザで寝込んじゃいました」という人もいる。勤務先の病院の外来診察室では患者さんとは診察机を隔てて正面に向き合って座っている。だから、患者さんの風邪をもらってしまう心配がある。しかし、精神科の場合、内科や外科のような一般の身体科の医師のようにマスクをしてしまうと、こちらの表情を隠してしまうので、スムーズな会話に支障をきたす。精神科医は普段はマスクをする習慣がない。自分が風邪をひいていれば患者さんにうつさないようにマスクをするところだが、悩ましいところである。時々、うがいをして自衛するしかないだろう。

 なぜ、正面向きなのか。それには精神科特有の事情がある。興奮が著しい患者さんや幻覚・妄想に左右された行動をしてしまう患者さんを診察する場合、医師自身の身を守る必要があるからである。実際、内科のように、診察机の横に患者さんが座るという病院で外来診察をしていて、カルテを書いていたら突然、横から顔をはたかれて、メガネを壊されてしまった経験がある。いつも知的障害者施設の患者さんたちを診ていた先生が休まれて代診した時のことだ。普段とは違う医師が対応したので、面白かったのだろう。奇声を発し、笑いながら手が出てきた。もっとも正面向きでも、興奮した患者さんが「ウォー」と叫びながら診察机を持ち上げて私の方に一気に倒してきたことがあったから油断はできない。


 これが、対人恐怖や赤面恐怖の患者さんだと、正面を向き合って話すと、強い緊張を感じて思ったことが言えなくて下を向いてモジモジしてしまう、ということがある。特に、席の向きは会食恐怖の人にとっては重大な問題であろうかと思う。向かいの人に見られていると思うと、食事が喉を通らず、言葉も出にくくなる。苦手な人の正面にならない席に座れればまだよいけれど、いつもそううまくいくとは限らない。そんな時には強い不安と緊張に襲われるだろうけれども、何とも仕方がないとあきらめて、他の人の発言に耳を傾け、他の人の食べ具合を観察して、仕方なしに食事を口に入れ、下手でも何でも最低限の会話ができればよいのだ、と開き直って対処していくことだ。

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