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2017年12月18日 (月)

神経質礼賛 1457.ハイケンスのセレナーデ

 一昨日には病院のクリスマス会があった。私は前座のトップバッターである。持ち時間は20分間。クリスマスソングは後で真打の「森田バンド」(職員によるギター・キーボード・ドラムなどのグループ)がやってくれるので、今回はあえてクリスマスソングを外した。1曲目はパッヘルベルのカノン。TV番組やCMBGMに多用されていて、一日に何度も聞くことがある曲だ。かなりゆったりしたテンポで演奏されるのが普通だけれども楽譜に指定されているテンポは結構速い。そこで速目のテンポにし、第2ヴァイオリンのパートはオーボエ音、第3ヴァイオリンのパートはフルート音にして違いをハッキリさせた伴奏音源を作った。2曲目は以前書いたクライスラー編曲版のヴォルガの舟唄(1437話)、3曲目はサラサーテ作曲ツィゴイネルワイゼン(短縮版)、4曲目目はハイケンスのセレナーデ、アンコール曲はいつものサティ作曲ジュ・トゥ・ヴというプログラムである。ハイケンスのセレナーデというと馴染みのない方も多いかもしれないが、心が軽くなるような名曲である。戦時中はNHKラジオ番組「前線へ送る夕(ゆうべ)」のテーマ曲として流れていたので80代以上の方は耳にしていたはずであり、私の母も好きな曲である。作曲者のハイケンスはナチスに協力したとして捕らえられて獄死しており、残っている曲は少ない。この曲は現在ではJRの寝台列車などで車内チャイム音に使われているらしい。もっと演奏されてもよい曲だと思う。

 午後の外来診察を30分ほどストップするため、その旨を外来に掲示しておいてもらう。伴奏音は大音量が出る私物のCDラジオのUSBモードで再生。トラブル発生時には病院にあるラジカセで再生できるようにCD-RWを用意、心配性なので念には念を入れ、マイクロSDが再生できるポータブルのスピーカーも用意した。万一、ヴァイオリンにトラブルが発生した場合にはサイレントヴァイオリンにスピーカーを繋いで弾ける準備も怠りない。そして昼休みに現場で音を出して最終確認した。

 さて、幕が開くと暗い会場は患者さんたちやクリスマス衣装に身を包んだ職員さんたちで会場は一杯、ライトが当たり緊張感が高まる。曲目説明はしどろもどろ気味である。1曲目と2曲目の演奏は無難に終える。3曲目は短縮版にしたとはいえ難曲である。最後の速弾きのところで左手ピチカート(弦を指ではじく奏法)が何カ所か落ち、曲の最後の右手ピチカートも外してしまうという有様だった。とにかくホッとして4曲目のセレナーデは気分よく弾いていたら、緊張が抜けてコーダ(終わり)部分への入りを間違える。やはり緊張は必要である。緊張が足りないと失敗する。アンコール曲は会場を歩き回りながら弾く。大きな拍手に応えて2回弾くことになった。

 翌日、病棟を回っていると、自分の担当ではない患者さんたちからも「良かったよ」と声をかけてもらった。そして、担当している90歳近い認知症の患者さんから「ヴァイオリンお上手ですね」と言われ、覚えていてくれたんだとうれしく思った。

 

 

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