神経質礼賛 1470.腹の立つ時どうすれば腹が和らぐか
長らく不定期に通院している外来患者さんがいる。強迫症状はあるけれども薬は処方していない。この人は転職を繰り返していて、いずれも人間関係がうまくいかず辞めている。本人もそれほど作業能力が高い人ではないのだが、自分より仕事ができない人を見ると腹が立って当たり散らしてしまう。そして、嫌っている人には挨拶もしない。これでは職場でも浮いた存在になってしまう。気分はどうあれ、相手が好きであろうと嫌いであろうと、職場では笑顔で挨拶するようにというアドバイスを繰り返しているけれども、なかなかそれができない。
森田正馬先生の形外会で、腹が立って苦しい時、その相手に思い切って言ってしまえば腹立ちが和らぐか、言った方がよいか言わない方がよいか、と森田先生に質問した入院患者さんがいた。それに対して森田先生は次のように話しておられる。
八間君が腹が立って、三、四時間も経て、まだ胸の中が熱いような感じがするという。これはいたずらに、自分の腹立ちの気分に執着し自分は腹が立たなければ、楽であろうに、なんとかしてこの苦しみがなくなればよいのにとか、その事ばかりに、心を集中するから、いつまでも忘れられない。ただ腹の立つままに、しかたなしに放任しておけば、自然に我々は、「心は万境に随って転ず」という風に、いつのまにか、ほかの事柄に、心が紛れて、じきに忘れてしまうはずである。これが自然の心である。神経質の自己中心的の執着がある間は、この自然の心はできないのである。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.272-273)
腹が立った時に相手に言ってしまう、というのは子供のすることであって、職場でそれをやったら自分の立場が悪くなる。言った瞬間はスッキリするかもしれないが、後に尾を引いてしまうことになる。やはり、感情の法則に従って、怒りの感情は放置してやるべきことを探してやっていくのが一番である(247・442・766話)。
最近のコメント