神経質礼賛 1469.湯豆腐
寒さが厳しいこの季節、おでんや鍋物といった湯気が上がる食べ物がうれしい。その中でも手軽に作れるのが湯豆腐だろう。以前紹介したように、森田先生も次のような歌を詠んでいる(499話)。
我妹が 設けて待ちつる 湯豆腐に 一日の疲れ 忘れ果てゝき(森田正馬全集第7巻p.445)
我が家でも冬場は、魚の干物の相棒としてよく食卓に登場するのだが(ちなみに夏は冷奴)、正直言ってどうもいま一歩なのだ。なぜだろうかと考えてみる。湯豆腐専門店のような極上の豆腐ではなく、スーパーで買う普通のパック入り豆腐であるのは仕方がない。ミネラルウオーターではなく浄水器を通した水道水を使っているのもそれほど悪くはないだろう。ちゃんとダシの昆布が鍋の底に敷いてある。ワカメとシイタケを入れるのも特におかしいわけではない。となると、やはり土鍋でなく金属製の鍋を使っているのが弱点なのかなあ、と推測する。金属鍋を火にかけると急激に温度が上昇してしまい沸騰させやすく、豆腐の味を落としている可能性がある。土鍋を弱火でゆっくり温める方がまちがいない。また、土鍋だと豆腐が冷めにくいというだけでなく、食卓に置かれた鍋が輻射熱を発するから温かみを感じさせて、一層おいしく感じさせてくれるのではないかと思う。とはいえ、後片付けの手間を考えると土鍋で作ってくれとも言いにくい。おいしいい湯豆腐を作る工夫にはダシ昆布を大量に入れるとか、日本酒を加えてアルコールを飛ばす、とかいうようなことがあるらしい。アルコールは飛ばさなくてよい。いつもの湯豆腐が出てきたら一杯の日本酒をお供させる方が手っ取り早い。そしておいしく食べてしまおうか、と企む。
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