神経質礼賛 1481.ひなまつり
明日は3月3日ひなまつりの日。病院でもひなまつりのレクリエーションがあり、各病棟を回っていると、職員や患者さんたちが飾り付けの準備をしたり、踊りの練習をしたりしている。
ひなまつりと言えば、まず、童謡のサトウハチロー作詞「うれしいひなまつり」が頭に浮かぶ。正直言って、子供の頃、暗い歌だなあ、と思っていた。日本古来の雅な陰旋法(ミ→ファ→ラ→シ→レ→ミ ミ→ド→シ→ラ→ファ→ミ)に乗ったような旋律だから短調として聞こえる。歌詞も、官女の雛人形の顔から「お嫁にいらした姉さま」を思い出す一節は寂しげな空気を醸し出している。三木露風作詞「赤とんぼ」の歌詞「十五でねえやは嫁にゆき」と同様、嫁に行ったら他所の家の人になって会えなくなる、という感覚は現代人にはない。嫁に行ってもいつでも実家に帰って親兄弟と食事を共にする時代である。しかし生活様式が大きく変化しても、この歌は名歌であることは間違いないし、これからもずっと歌い継がれていくことだろう。
近年の少子化で雛人形の業界は苦労している。森田正馬先生の奥さん久亥さんのように雛人形の大人買いをする人もそうはいない。
吾妻は 四十路になれど 雛買ひて 嬉しがるなり 昔語りして(白揚社:森田正馬全集第7巻p.442)
口では「年甲斐もなく雛人形なんか買って」と言いながらも、喜ぶ久亥さんを目を細めながら見ている森田先生の姿が浮かんでくる。女の子がいない森田家も華やいだ雰囲気に包まれたことだろう。
わが家には小さい地味な雛人形があって玄関の下駄箱の上に一週間ほど登場する。それを見ると春だなあと感じる。さらに、一昨年、妻がもっと小さなガラス製の雛人形を買ってきて、ピアノの上に年中置きっぱなしにしている。上手い人がバンバン弾いたら人形が飛び跳ねたりひっくり返ったりしそうだが、妻ではその心配は全くないので安心である。
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