神経質礼賛 1504.東芝未来科学館
前話の続きの目的地は川崎駅前にある東芝未来科学館である。昨今の状況からして閉館が懸念されるため早目に見ておきたかった。子供向けの入場無料の科学館であるが、大人も十分に楽しめる。ちょうど超伝導の実験をやっていたので親子連れの中に混じって見る。理屈はわかっていても、液体窒素で冷やした模型が軌道を外れずに宙を浮いて滑るように動いていく様子は実に不思議な感じがする。静電気の実験のところでは、髪が総立ちになった親の様子を大笑いでスマホに撮る子供がいた。子供向けの工作教室も開かれていた。以前は渋谷に東京電力の科学館があって、私も子供を連れて行ったことがある。子供たちに科学技術をやさしく教えてくれる企業立のこうした施設がだんだん減っていくのはさびしい。
東芝の創業者があの「からくり儀右衛門」・江戸時代後期から明治にかけての発明家・田中久重(1799-1881)だったとは知らなかった。久重の発明品が展示されていた。そして、その原点となったからくり人形の実演があった。お茶を置くと客人の所まで運び、客がお茶を飲んで置くとUターンして戻ってくる茶運び人形のしくみを見せてくれた。実は最初に距離を設定して、そこまで行くとカムが回って車輪が曲がりUターンする仕組みになっているのだ。さらに横の展示室には洗濯機・冷蔵庫・掃除機・TVなど電化製品の一号機が展示されていて、興味深かった。
久重は高い志を持ち、創造のためには妥協を許さず、「知識は失敗より学ぶ」と常々言っていたそうである。後進の技術者たちは次々と夢を実現していった。しかし、近年になって海外の企業買収などで安易な利益を追求するようになり、会計処理もごまかすようになって、日本を代表する超一流企業があっという間に破綻寸前にまで転げ落ちた。すでにおなじみの家電部門は別会社。唯一の稼ぎ頭である半導体部門も身売りされる。経営陣の中にリスクを十分に考えて先を読む神経質人間がいなかったのが災いしたのではないかと思ったりする。
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