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2018年7月 3日 (火)

神経質礼賛 1522.森田先生の肖像画と写真

 昨日、医療サイトのニュースを見ていたら、高知新聞からの引用で、かつて富家小学校の講堂に掛けられていた森田先生の肖像画が、香南市野市町の野市図書館で発見された、という記事があった。その講堂とは森田先生が私財を投じて建てたものに他ならない。早速、「高知新聞 森田正馬」で検索してみると、その写真を見ることができた。紋付の羽織・袴姿でピンと伸びた口髭が目立っている。実際にその肖像画を見た卒業生によれば、立派な口髭がずっと印象に残っていたということだ。この肖像画は、森田療法についてのバイブルとでも言うべき大原健士郎著『森田療法』(世界保健通信社)に「最も森田らしくない肖像画」として紹介されていたものである。衣服は画家が描き加えたらしい。紙幣の肖像画としても使えそうな、いかにも偉人といった雰囲気の画である。


 森田先生の写真にもいろいろあって、受ける印象が異なる。最も有名なのは、詰襟服の写真である。ちょっぴり怖そうで近寄りがたい雰囲気がある。それに対して近頃よく使われるのは洋服姿で笑顔の写真、そしてそれを基にした似顔絵である。この方が一般受けしやすいと思われ、生活の発見誌では多用されている。もっとも、森田先生は普段、診療所では着流しのような和服姿のことが多かった。初めての患者さんからすると、古閑義之先生をはじめとする助手の先生が森田先生に見えて、本物の森田先生は下働きのおじいさんに見えてしまうということもあったようである。


 私が一番好きな写真は最晩年の写真である。傘を手にして小さな乳母車にちょこんと座り、患者さんに押してもらって「散歩」した時の写真で微笑んでおられる。病気のため、体力的にかなり厳しい中でも、生の欲望に沿って生き尽そうとした姿勢が示されているように思う。大原健士郎先生は、著書『神経質性格 その正常と異常』(星和書店)の中でこの写真について次のように解説されている。


 森田は病身のため、晩年、乳母車で外出した。自動車よりも便利で、どこでも入っていける利点があった。患者に「恥ずかしいか」と尋ね、「平気だ」と答えると、「そんなことはないはずだ。素直になれ」と諭した。「恥ずかしくても、気分はあるがままに、やるべきことをやれ」という意味である。森田はどのような状況でも、精神療法を行った。


 診察室の中だけでなく、いつでもどこでも生活の中のあらゆる場面で精神療法を行うのが森田療法のすばらしいところである。現代の森田療法家でそれを実践している人がどれだけいるだろうか。

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