神経質礼賛 1527.騙(だま)し騙し使っていく
中高年の患者さんたちの話を聞いていると、種々の身体的な不調に関する訴えが多い。頭痛、めまい、動悸、関節痛、微熱、顔のほてり、手足のしびれ、腹部の不快感など実に多岐にわたる。こうしたサインがガンなどの重大な病気の初期症状の可能性はあるけれども、心配して内科・外科・整形外科などを受診して血液検査、レントゲン、CTなどの検査を受けても特に異常は見つからず、気休めの薬を処方されて「様子をみましょう」ということも少なくない。女性だと「更年期障害かもしれませんねえ」という結論になったりする。そこで、また別の医療機関を渡り歩いてドクターショッピングをしたのでは、同じような検査を繰り返し行われることになり、医療費の無駄遣いにもなる。実は「経過をみる」ということも医療上は意義のあることで、症状が悪化した時に前と同じ医療機関で診てもらえば、検査値や画像の変化がわかり、正確な診断・治療に結びつきやすいのである。
楽天的な人だと咳がひどく出ていても平気で喫煙し、体調が悪くても飲酒してしまう。その点、神経質な人は身体的な不調に目が向きやすく、ちょっとした不調が重大な病気のサインではないかと心配し、昔なら家庭の医学の本を読み漁り、今ならネット検索で調べまくる。その 結果、注意集中→感覚鋭化→意識狭窄→注意集中→・・・という森田正馬先生が言われた「精神交互作用」の悪循環をきたしてとらわれを深め症状を固着させてしまうことにもなる。
医療機関で検査を受けても明らかな異常がなかったのであれば、今のところ正常範囲として、健康人らしく仕事をしたり家事をこなしたりしていくことである。かくいう私にも身体的な不調は出たり引っ込んだりしている。「まあこんなもの(111話)と思って、無理のない程度に騙し騙し体を使っていきましょうよ」という患者さんたちへのアドバイスは自分自身への言葉でもある。
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