神経質礼賛 1538.不眠を治すのは自分自身
入院中の患者さんの頓用薬としてよく処方されているのが睡眠薬と便秘薬である。午後10時から午前2時位の間に「眠れない」と訴えてナースステーションにやってくる人は毎晩いて、あまり遅い時間でなければ、あらかじめ指示された睡眠薬が投与される。指示がない場合は当直医に判断が求められる。そうした患者さんたちには特徴がある。典型的な人は作業療法や病棟行事に参加せず、部屋に籠っている。作業療法に出ていても、昼食後は寝て過ごしてばかりいる人だと、不眠を訴えやすい。普段処方されている薬の中に睡眠薬が入っていても、日中ゴロゴロしていたのではなかなか寝付けず夜間不眠を訴えることになるのである。
対策として、スタッフと相談して、なるべく作業療法や病棟行事に出るように促してはいるけれども、慢性期の統合失調症の人だと声かけしたり連れ出したりしてもすぐに自室のベッドに戻ってしまう、の繰り返しになりやすい。それでも、あきらめずに誘導してもらっている。頓服の睡眠薬を服用すると、翌朝の覚醒が悪くなりやすいので、患者さんによっては、不眠を訴えてナースステーションにやってきた時にはプラセボ(偽薬)の乳糖を与薬することもある。それでも、普段の薬で十分眠れるので、大抵は看護師さんが巡回すると眠っている。院内薬局で調剤された乳糖には「SL 1g」とプリントされているから、薬好きの患者さんの中には自ら「SL下さい」と言ってくる人もいる。
外来患者さんでも不眠を訴える人は多い。そこで患者さんの求めに応じて安易に睡眠薬を追加処方していくと、ますます朝が起きられなくなり昼寝も増えて、さらに睡眠リズムを乱して不眠を悪化させる、という悪循環を招く。もちろん、統合失調症や双極性障害のような精神病の場合は基本的な薬物療法を行った上で症状に応じて睡眠薬を使わざるを得ない場合もあるが、かつて森田正馬先生の言われた通り、神経症の不眠に睡眠薬は無用かつ有害である。毎朝決まった時刻に起きて、日中は仕事や勉強などで活動するよう生活習慣を整えるのが本当の治療法であり、治すのは自分自身なのである。
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もう大むかしのことですが、私の場合は、つよい不安感が付きまとうようになり、同時に不眠になったのが神経症の始まりでした。寝ようという時間になると、今夜も眠れないのでないかという予期不安でますます眠れなくなっていました。
一年以上たってから、ある森田の先生と出会い、眠れなくてもたいしたことはない、眼を閉じて横になっていれば十分に体力は回復する、というよな気持ちで過ごすことを覚えてからは、不眠に関しては悩むことはなくなっていったような覚えがあります。その先生も、就寝・起床時間、食事時間などを一定にして生活リズムを整えることを忘れたいかなる療法もまやかしである、というお考えでした。
投稿: | 2018年8月24日 (金) 06時43分
コメントいただきありがとうございます。すばらしい先生に出会われて、不眠症を御自分の力で治されたのですね。
投稿: 四分休符 | 2018年8月24日 (金) 21時33分