神経質礼賛 1543.おいあくま
先週のNHK歴史ヒストリアを録画しておいたものを見た。武田信玄の一代記とも言える甲陽軍鑑がテーマだった。この書は長年、江戸時代に作られた偽作とされていた。地道で丹念な研究から使われている言葉が戦国時代末期より古いことを明らかにし、甲陽軍鑑が信玄の家臣が作らせた真作だったことを証明した、国語学者の酒井憲二さんについても紹介されていた。酒井さんは、弟子さんたちに心掛けることとして「おい、悪魔ちゃん」ということをよく言われていたそうだ。おこるな・いばるな・あせるな・くさるな・まけるな、の頭文字を並べれば「おいあくま」になる。
私は初めて聞く言葉である。元は誰の言葉なのだろうか。ネット検索で見ると、有名な禅僧が言っていたり、社訓にもなっていたりするようだ。曹洞宗の祖・道元の言葉という話もあるが、本当のところはわからない。
それにしても、なかなかいい言葉だと思う。「怒るな」から始まるのは大隈五訓(288話)と同様である。それだけ、怒りのコントロールは重要なのである。私のように頭が呆けかかってくると、一つずつ何の頭文字だったかなあ、と思い出しているうちに時間が経って、自然に怒りの感情が消褪する効果も期待できよう。小心者の神経質人間は威張ることは少ない。威張って嫌われるのは自己愛が強い人である。あせるな、くさるな、まけるな、の三つは、すぐ悲観して凹みやすい神経質人間にピッタリだ。神経質は粘り強いので、ダメで元々、というつもりで気分はともかく行動していれば、いつしか道は開けている。
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