神経質礼賛 1559.寝れば寝くたびれる
70代前半の男性患者さん。近隣トラブルを繰り返して警察沙汰となって入院してきた人である。自分の体に関する心配がとても強く、訴えが非常に多いので、他の病院の泌尿器科、整形外科などを受診させたが特に治療が必要なレベルではなかった。いつも「夜眠れない」と訴え、作業療法を勧めても「膝が痛いし腰も痛い」と言って一日中臥床していた。担当の看護師さんと一緒になって日中は起きてもらうように頻繁に声掛けをしていた。御兄弟の協力により入所できる施設が見つかってようやく退院に漕ぎつけた。それから3カ月になる。見違えるようにシャキっとした歩きになり、健康的な表情に変わってきた。兄の家から近い施設なので、兄や甥がよく面会している。週2回、施設からデイケアとリハビリ施設に通所しているのだそうだ。また、週1回はスーパーまで送迎バスが出ているのでそれに乗って買物に行くのが楽しみなのだそうだ。やはり、寝過ぎは禁物。特に昼間も寝ているのは良くない。森田正馬先生は次のように言っておられる。
例へば、「寝れば、寝くたびれる」といつて、誰でも朝寝過ぎれば、頭は重く・身体はだるい。それで神経質は、試験勉強とかいふ時、頭の重い事に・氣のついたのを動機として、それから自分は、神経衰弱になつたかと思ひこみ、安静にしなければならぬと考へ、「保養と怠惰は、似て非なるものなり」といふ様に、朝寝をしたり・無精をして・なまけるために、益々其症状を自分で仕立てあげるやうなものである。(白揚社:森田正馬全集 第6巻 p.177-178)
連休の時、「出かければお金がかかるし、どこも混んでいるし、疲れているから」とゴロゴロ寝ていてはかえって疲れるだけである。普段できない片付けや掃除をすると達成感がある。遠出しなくても、催し物を調べて見に行ったり、カメラをポケットに入れて季節の草花を探しながらミニハイキングをしたり、たまには将棋盤を引っ張り出して新聞の棋譜を並べてみたり、とお金をかけずに楽しめる方法はいくらでもある。神経質を生かして休日の過ごし方を工夫してみよう。
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