神経質礼賛 1574.いもぼう
今回、京都の円山公園の中にある平野屋本家で食べた昼食は「いもぼう」という料理だった。名前だけは聞いたことがあるけれども、食べるのは初めてだ。これは、江戸時代中期に考案された京料理で、京都の海老芋と北海道の棒鱈(ぼうだら)を一緒に煮たものである。なんでも、棒鱈を煮る時に出た膠(にかわ)質が海老芋を包んで煮崩れを防ぐとともに、海老芋から出るアクが棒鱈を柔らかくする、といううまい組み合わせになっていて、店では「夫婦(めおと)炊き」と呼んでいるのだそうだ。全く異なる素材同士の性質を生かした「出会いもん」である。人間の夫婦でも、森田正馬先生が言われたように、性格が異なる同士の方が相性が良いようだ(270話)。
早い時刻に入店したので、まだ他に客はいなかった。年配の店員さんが、「寒くありませんか。暖房を入れましょうか」と気遣ってくれる。椅子席なのでラクである。料理は全体的に茶色系なので地味に見えるがとてもいい味である。いもぼうは海老芋と鱈の味が混然一体となっている感じだ。祇園豆腐と言うと、串刺しにした豆腐に味噌が乗ったものと思いきや、この店のそれは、あんかけ豆腐だった。とろろ芋海苔巻も意外に美味しくて日本酒の燗酒にとても合う。ただし、全体的に腹八分目いや七分目という感じなので、単品の卵焼きを追加注文した。甘さや塩分は控えめでダシの味がよく効いていてこれまた良かった。一度は食べてみる価値のある京料理だと思う。
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