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2018年12月28日 (金)

神経質礼賛 1579.認知症になったら

 先日、新聞の記事に認知症研究の第一人者・長谷川和夫先生自身が認知症になったことを講演で話されたことが紹介されていた。長谷川先生は現在89歳。聖マリアンナ医大の学長をされ、日本中で広く使われている認知症の簡易検査・長谷川式スケールを開発したことで有名である。文芸春秋20184月号に長谷川先生のお話が掲載され、文春オンラインで読むことができる。長谷川先生の場合、嗜銀顆粒性認知症というタイプのもので、80代以降に発症することが多く、緩徐に進行する。認知症になって「確かさ」がはっきりしなくなった、と痛切に感じておられるという。自宅を出た時に鍵を閉めたかどうかはっきりしないので、何度も確認しに戻ってしまう。行動だけをみると、まるで強迫性障害の確認行為である。

 長谷川先生は「認知症は、長生きすれば誰にでも起こり得ることです。だから、ありのままを受け入れるしか、仕方がありません。まずは自分にできる範囲のことをやる。その上で、少しでも人の役に立つようなことができたら、それ以上嬉しいことはない。そんなふうに考えながら、日々を送っています」と語っておられる。

 実は長谷川先生は森田療法にも精通し、『森田療法入門』(ごま書房)という優れた入門書を書かれている。マンガも入っていてとてもわかりやすいので私は自分の患者さんによくお薦めしていた。そんなわけだから、「己の性(しょう)を尽くし、人の性を尽くす」(350)という森田的生き方を体現しておられるのだと思う。この考え方は認知症だけでなくいろいろな状況に応用できる。例えば末期ガンに対しても同様であり、少しでも人の役に立つこと、例えば人を笑わせ愉しんでもらうでもよいからそれをやっていく、というのが森田療法をがん治療に応用した「生きがい療法」である。それを思えば、人前が恥ずかしくてドキドキするとか、息苦しくてパニックになるとか、確認を繰り返すとか不潔が気になって長時間手を洗う、など神経症の症状を理由に行動しないのは実にもったいない。周りを見渡せばやるべきことはいくらでも見つかる。見た所に仕事あり(1008)、そして、仕事が人を治す(154話・1275)のである。

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コメント

鈴木知凖先生のご指導で24歳の時、全治した者ですが、旧制東大医学部をトップで卒業された先生も、97歳ごろは若干の認知症がありました。「96歳までは現役を続ける」と60歳代におっしゃっていましたが、その通りに実行されました。長谷川先生のお言葉には同感いたします。
鈴木先生は97歳で、卒業生(私たちは鈴木知凖診療所を「鈴木学校」と呼んでいました)の内科医のところに入院していましたが、その医師から私のところに時折近況のメールがあり、時々の様子は知っておりました。鈴木先生は悩んでいる方をどうやったら速やかに飛躍させられるか、とここに全力で取り組まれた方でした。森田理論に走って患者さんの日常から遊離することがありませんでした。
私たちは「現在になりきるところを通って、人は内発的に展開する」とよく聞かされていましたが、今、今、今・・・と現在を価値批判することなく今に取り組んでいくと、内発的に心は展開(解決)するということでした。
「今になりきる」とは、苦しい症状はそのままに今を工夫して今に全力になって・・・ということでいいと思います。
今なにをするか、今どのようにするか・・・と目前のことを工夫して工夫して入院生活しておりましたら、ある日の夕方、先生の一言をきいた瞬間に「わかった・・・」とすべての疑問・もやもやが消失しました。その時の心境は「心の底が抜けた」でした。
心の底にいろいろと分別が澱んでいたものがいっぺんで抜け落ちたのです。翌日は先生のところのいつもの庭木が輝くように見えました。
森田先生が大切に(発明)された「遮断の環境」が私を劇的に変えてくれました。私の人生はその時からは全く質を異にして始まったように感じます。先生のご指導の一端を感じていただきたくて過日「鈴木知凖診療所における入院森田療法」という本を私たちね研鑽会である「正知会」から発行しましたが、今までの入院生の個人的体験・感想から少し離れて、先生の指導内容をうかがい知れるようにという意図を込めて作成いたしました。
若い方々やご指導される医師の方々のご参考になれば心よりうれしくなります。

今に生きる 様

 コメントいただきありがとうございます。

 知準先生は御長命であっただけでなく、最後の最後まで森田療法を続けておられました。60代で「96歳まで現役を続ける」と宣言されて、その通り実行されたということは今まで知りませんでした。なかなか言えることではありませんし、ましてや実行するなど至難の業です。あと十年働ければ「御の字」かなあ、などと弱音を吐いている私とは雲泥の差であります。
 正知会発行の『鈴木知準診療所における入院森田療法』は「鈴木学校」での知準先生の切れ味鋭い教えや先生の深い人間味を活写するとともに、本来の森田療法のエッセンスを伝える貴重な書だと思っています。

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