神経質礼賛 1581.サイコロ
小学生の頃は、正月には必ず伯父の家に遊びに行き、従兄弟たちと将棋や双六などのゲームをして過ごしたものだ。特に面白かったのが「バンカーズ」というモノポリーに似たゲームで、サイコロを振って、目が出た分進み、そこの指示に従う、というだけでなく、土地や家を買って儲けるというもので、結構アツくなったものだ。この御時勢、サイコロに触れることはほとんどなくなった。ちなみに子供の頃の定番だったお菓子・明治製菓のサイコロキャラメルもすでに製造中止となり、北海道で限定生産されているという。
サイコロを振った時に、その目が出る確率はどれも6分の1だと、誰もが知っている。しかし、森田正馬先生は、あえて実験されている。
<蓋然数>
或時正月の慰みに、賽コロを振つて、其目の出る度数を数へた事がある。総振り出し数、一千二百回の中、左の数が出た。
一の目、二百二十六回(平均数より増、二十六)
二の目、二百三回(・・・・・増、三)
三の目、百七十四回(・・・・・減、二十六)
四の目、百八十六回(・・・・・減、十四)
五の目、二百十三回(・・・・・増、十三)
六の目、百九十八回(・・・・・減、二)
此蓋然数は、各二百回宛である筈であるのに、実際は其出入りが、二回から二十六回であつた。尚ほ賽コロは全く正しい方形をなせるものは少なくて、各賽コロに多くは多少の出癖のあるものである。此場合には一の目が最も出やすくて、三の目が最も出にくいのである。
賭博の時に、其癖を知つて置けば、必ず最後の勝を得る筈である。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.192)
実物のサイコロは、目を彫ってあるので、均質な立方体ではない。特に1の目は彫が大きいため、その分軽くなって、出やすくなっているのだろう。このように、一見当たり前と思うことにも疑問を持ち、科学的な眼で検証するところが森田先生らしい。
三島森田病院には次のような色紙が保管されている。
「常に何かを食ひたいと思ふ人は健康な人であり、常に何かを知りたがり疑ひ考へ工夫する人は精神優秀なる人なり」
本年もよろしくお願いします。
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