神経質礼賛 1623.酸蝕歯(酸蝕症)
歯科医院から送られてくる定期検診の案内にはいつも歯の病気にまつわる記事のコピーが添付されている。今回は酸蝕歯についてであり、なるほど、これは気を付けないといけない、と思ったので紹介しておこうと思う。
精神科病院に長期入院している患者さんには歯が悪い人が多く、40代、50代くらいから歯がどんどんなくなってしまう人をよく見かける。セルフケアができず、正しい歯磨習慣が身についていないのが大きな要因になっているが、意外な盲点はこの酸蝕歯だった。病院食を食べているから栄養的には問題ないはず。しかし間食が曲者である。菓子類によるカロリーの摂りすぎやカップ麺の塩分摂りすぎはよく注意するけれども、正直言って炭酸飲料までは頭が回らなかった。歯が悪い人で、いつもダイエットコーラを飲んでいる人がいる。人工甘味料だからカロリーの問題は少なく、砂糖は使っていないから歯にも悪くなかろうというのは、全く勉強不足だった。酸性の度合いはpH(ペーハーあるいはピーヘイチ)で示される。中性の純水はpH7で、酸が強いほど数字が小さくなる。多くの市販飲料がpH5.5以下の酸性を示す中、特にコーラ類はpH2程度で強い酸である。そうした強い酸に晒されると歯のエナメル質が溶けて失われ、軽いうちは歯がしみる知覚過敏を起こし、さらには象牙質の損傷を招き虫歯にもつながるのである。
入院患者さんに限らず、私たちの食生活は酸を多く摂るようになっている。サラダのドレッシングや柑橘類やワインや炭酸飲料など、洋食が多くなって酸を摂取する機会が増えている。よく健康のためと称して黒酢を飲む人がいるが、酢のpHは普通3程度であり、これも要注意である。後でお茶や水を飲んだり、うがいしたりすることで酸蝕は防ぐことができる。この辺は神経質になった方がよい。だらだらとペットボトルの炭酸飲料を飲む習慣は避ける必要がある。これから夏場に向けて、脱水や熱中症対策にスポーツドリンクを飲む機会も増える。時々は水や麦茶にしたり、うがいしたりして、酸蝕からかけがえのない歯を守ろう。
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