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2019年5月19日 (日)

神経質礼賛 1627.ひきこもり100万人超・8050問題

 当直中、朝4時半に目が覚める。時々遠くからホーホケキョというウグイスの鳴き声が、そして近くでチュクチュク・ピー・チュクチュクという絶え間ない小鳥の鳴き声が聞こえてくる。カーテンを開けるともう外は明るい。飛び回るツバメの姿が見える。勤務先の病院はツバメたちの常宿である。換気扇の吹き出し口の上の小さな屋根の上に巣がある。毎年この時期にはせっせと餌を巣に運ぶ親鳥、巣から口を伸ばして餌をもらうヒナ鳥たちをあちこちで見ることができる。やがて親鳥はヒナたちの巣立ちを促し、ヒナたちの訓練飛行が始まるのだ。

  先週の保健所の精神保健相談は2件ともひきこもり、それも経過の非常に長いケースだった。1件目は40代男性。学校を出て2年ほど会社員をしていたが、突然辞めて家に戻って来た。その後は再就職してもすぐに辞めてしまい、以来ひきこもりが続いている。病院を受診したこともあったが続かなかった。一切親とは顔を合わせず、毎月の小遣いを親が部屋の前に置いておくとそれを受け取り、時々早朝の人に見られない時間に出かけて食べるものを買ってくるらしい。カーテンを閉め切っているし、エアコンは塞いでいるというから、妄想の存在が疑われる。ある時、部屋に入ったら激怒し、殴りかかってきて警察が介入したが、特に精神科を受診するようには言われず、親としては怖くて何もできないという。このままでは本人はなにも困らず同じ状態が続くだけだ。まずは小遣いを減額して反応を見てみたらどうかとアドバイスした。そこで何か言ってきたら話し合いのチャンスである。もし殴り掛かるようならすぐ110番通報して警察に介入してもらい、今度は保健所との連携で医療機関受診に結び付けやすくなる。

  2件目も40代だが、こちらは兄妹ともひきこもりである。最初に兄がひきこもりになった。仕事を突然やめ、ひきこもる。病院にも行ったが「病気でない」と言われた。親とは一緒に食事はするが仕事の話をしようとするとごまかす。統合失調症ではなさそうであるが、回避性パーソナリティ障害には該当しそうだ。病気ではないにせよ、医療機関を受診して作業所利用に結び付けていければ道も開けてくる可能性がある。一方妹の方は発達障害的な面が強いように思われた。一時は独り暮らしをして働いたこともあり、その後実家に帰ってからもしばらく働いた後はひきこもり、自分の部屋にカギを付けて入られないようにしている。家族と一緒に食事をせず、ネット通販やスーパーの配達サービスを利用して欲しいものを買って自分で食事は作って食べているという。それらは親のクレジットカード番号を使っているというので、まずはそのクレジットカードをキャンセルして使えないようにすることをアドバイスした。兵糧攻めである。

 ひきこもりの問題は当ブログでも何度か取り上げてきた(79195232314441話)が、ひきこもりは増加の一途を辿っている。今年の内閣府の発表によれば40歳から64歳のひきこもりは61万人にのぼり、40歳未満のひきこもり54万人と合わせると軽く100万人を超えている。最近では80代の親が50代のひきこもりの子を支える8050問題もクローズアップされるようになってきた。高齢の親が子供を扶養しているが、親も病気になったり要介護状態になったりして、経済的に行き詰ってしまうという事態が発生する。時々、親が亡くなっても遺体を放置していたひきこもりの子が逮捕される、という事件が発生している。ひきもりのため親の死に対処できないということと、親が亡くなると年金が入ってこなくなって生活に困るために放置していたと考えられる場合もある。

  子供がかわいそうだということで、いつまでもエサを与え続けていては、それに依存して巣立ちができない。ツバメの親を見習う必要がある。緊急回避的な援助はやむを得ないが、長引かないように、援助する条件として職を探す努力をさせる、場合によっては医療機関を受診させてデイケア参加や作業所利用へ結びつけることも必要である。失業保険がもらえる代わりに職探しの努力をしなければならないのともらえる期間に限度があるのも、それに依存して働かないのが当たり前にならないような仕組みになっているのである。

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