神経質礼賛 1640.雨とうつ
毎日のように雨が降る、梅雨まっただ中である。やはり、雨の日は気が重い。出勤前に雨が降っていると機先をそがれる感じがする。傘をさして駅まで歩いていくと疲れが出る。特に大雨の日は電車が運休となることもあるから、ネットで運行状況を調べ、念のためいつもより1本早い電車に乗ろうか、などとやっているからますます疲れる。休日であっても、雨だと外出しようという気分にはなれず、最低限の買物を済ませたら後は家で過ごすことになる。外来患者さんたちの中にも、雨で気圧が下がっている時は、頭痛や関節痛がいつもよりひどい、と訴える人がよくいる。雨で気分爽快という人はめったにいないだろう。うつ気分は雨に例えられるかもしれない。
誰でもうつになる時がある。元来、気分が変動しやすい人もいるし、ある季節になると気分が落ち込みやすいという人もいる。そうでなくても職場や学校や家庭内のストレスなどがうつの原因になりうる。それを跳ね返す力が十分にある時は耐えられるが、ストレスの方がそれを上回る、あるいは力が弱っている場合、それが長続きすると支えきれずに、うつ状態になってしまうのである。
うつが重度であれば、とにかく休養して病状に合わせた薬物療法を、ということになる。しかし、軽いうつ状態の時には、無理にならない程度に動いていくことも必要である。よく、森田療法では行動本位ということを言うので、うつであっても気分はともかく働かなければならないのか、と誤解される方もいるかもしれない。しかし、それは毎日畑に水を撒くように言われたからと言って雨の日も畑に水を撒こうとするようなもので無意味であるばかりか有害である。本来、その時々の状況に合わせて柔軟に対応していくのが森田流なのである。森田正馬先生自身も少し熱がある時は臥床しながら読書。熱が高い時は軽い本を読み、さらに重症で消耗している時は寝たままで人に本を読んでもらう、というようにしていた。
神経質の人は真面目で完全欲が強い。そういう人がうつになると、できないことばかりに目が行って、自分は全然ダメだ、減点法で考えて0点だと決めつけてしまう。しかし、客観的には、朝には起き出して身支度ができている、洗濯ができている、食事も自分でやっている、時々は掃除機もかけている、とできたことを加点していけば、まるでダメということはない。後は、その時の力具合でもって、できることを無理せず少し積み重ねればよい。100点満点ではなく、肩の力を抜いて60点、70点を目指していけばよいのである。雨の日が1年中続くことはない。いつしか雨は上がり晴れ間が出る。うつも時間が経てばよくなってくる。焦らずにその日を待とう。
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