神経質礼賛 1650.くやしいままに奮闘
私たち神経質人間は、自分を他人と比較して、自分は全然ダメであると劣等感を持ちやすい。しかし、その裏には人より優れたいという強い「生の欲望」が隠れている。悔しさをバネにするとはよく言うけれども、神経質は粘り強く努力を積み重ねることには長けているため、結果的にはダメどころか人並み以上の成果を出すことができる。そして、決して慢心しないのが神経質の美点でもある。森田正馬先生は次のように言っておられる。
手の焼けどの奇形が、くやしくて、其のくやしいまゝに、努力奮闘したのが、世に名高き野口英世博士であり、●病の奇形の手を、ことさらに、衆人の前にさらけ出して居るのが、巡査に追立てられる乞食である。
神経質は、往々にして、自分の恥かしいと・氣のついた事に対して、徒らに之を隠さんとするものが多い。そして、或は之を恥かしく思はざらんとして、乞食の心理を模倣せんとするものが多く、その恥かしいまゝに・くやしいまゝに・野口を模倣すればよい・といふ事に、氣のつかぬ者が多い。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.440)
敗戦した時の惨めな自分の姿を描いた「しかみ像」(209話)を座右に置いて、努力奮闘の糧、そして慢心の戒めにしていた徳川家康、寝る前の1時間を反省の時間にしていた松下幸之助(211話)、すばらしい例は今まで何人も御紹介してきた通りである。
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