神経質礼賛 1657.ドミンゴとプッチーニ
先週、世界的なオペラ歌手のプラシド・ドミンゴ氏が9人の女性歌手やダンサーたちから過去のセクシャル・ハラスメントを告発された、というニュースがあった。ドミンゴ氏の公演予定は中止になったという。スポーツ界、映画界などあちこちで自分も被害者だと声を上げる人々が増えている。その点、小心者の神経質人間ではセクシャル・ハラスメントを起こす可能性は低い。元来、人がどう思うか過度に気にするため、そうしたニュースに接すると「こんなことをしたら(言ったら)セクハラと思われはしまいか」と心配して、ますます口が重くなり、行動も委縮しがちになるのである。
ドミンゴ氏はルチアーノ・パヴァロッティ氏(故人)、ホセ・カレーラス氏とともに三大テノールと称賛されてきた。極めて広いレパートリーを持っているが、特にプッチーニの歌劇「トスカ」での出演が最多なのだそうで、プッチーニの全作品の録音も果たしているという。「トスカ」の他「ラ・ボエーム」「蝶々夫人」「トゥーランドット」などの作曲で有名なジャコモ・プッチーニ(1858-1924)はパニック障害にかかったと言われているが、神経質ではなくヒステリーであると以前書いた通りであり(374話)、その実生活はオペラさながらであった。音楽之友社から出ている南條年章著『プッチーニ』は作品を追いながらの伝記となっていて、最後の作品篇に主要オペラのあらすじと解説が紹介されている。「トスカ」の項を見ると、物語の残虐性のために近年まで非常に毀誉褒貶の激しい作品だったそうである。大変な名作ながら、拷問・強姦・刺殺・自殺といった場面が続き、発表当時の聴衆には衝撃的だったようだ。神経質には作れない作品である。
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