神経質礼賛 1658.だらだら・ごろごろ(1)
外来患者さんで、「何にもしないでだらだら過ごしてしまう」「やる気が出ないんです。一日中ごろごろしてしまう」と訴える中高年女性をよく見かける。本人としては、「だらだら」「ごろごろ」に対する罪悪感が強く、自分が許せないのだろう。しかし、付添の夫や娘さんから話を聞くと、洗濯は毎日やっているし、時々掃除機もかける。確かに料理はあまりせずに買ってきた惣菜で済ませてしまうことも多いけれども御飯は炊いて味噌汁は作っているという。365日休まずにそれなりに必要なことはやっているのだ。たとえ惣菜を利用するにせよ、毎日の献立を考えるのは結構大変なことだと思う。主婦には、こまごまとした仕事は多いし、家をきれいにしておかなくてはならないというプレッシャーも大きい。全く休みがないことを考えれば、主婦業も見た目以上に大変なのである。だから、「現状でも十分に合格点です」「もう少し、何か楽しめることを探してみましょう」というメッセージを私は送るようにしている。
そんなことを言うと、「え?おかしいじゃないか。行動本位・目的本位に休まずに仕事をしていくのが森田のやり方のはずだ」と仰る方が必ずおられるだろう。それは短絡的な見方である。行動本位・目的本位というのは、あくまでも、屁理屈ばかり言って、やればできるのに「できない」と言い張ってやるべきことをやらず、症状を可愛がる気分本位の神経症の人に対する指導の言葉なのである。病状や体調さらには周囲の状況によっては、無理は禁物ということもある。適度な休みも必要だし、本来は仕事と遊びとバランスが取れているのがベストなのである。
« 神経質礼賛 1657.ドミンゴとプッチーニ | トップページ | 神経質礼賛 1659.だらだら・ごろごろ(2) »
« 神経質礼賛 1657.ドミンゴとプッチーニ | トップページ | 神経質礼賛 1659.だらだら・ごろごろ(2) »
コメント