神経質礼賛 1670.松下幸之助と妻むめの
先週の水曜日、NHKの歴史ヒストリアは「夫婦で起こした家電革命 松下幸之助と妻むめの」という番組だった。番組の中では幸之助(211話)は病弱で神経質で癇癪持ちであり、奥さん・むめのさんの支えがあって大偉業を成し遂げることができた、というような話になっていた。むめのさんは幸之助が会社を辞めて起業すると言い出した時に反対しなかった。生活は苦しく夫に内緒で嫁入道具を質に入れたりして資金を工面していたが、明るく夫を励まし続け、会社が少しずつ大きくなっていくと従業員の世話もしていた。むめのさんあっての幸之助だったことは確かである。裸一貫から起業して成功し、やがて森田療法の世界的な普及に尽力された岡本常男さん(37・268・269・871話)の妻・佳子さんもむめのさんとよく似ていると思う。どちらも、森田正馬先生が「神経質の人は、気の軽い大まかな人と結婚するがよい。すると気の軽い人は、あの人はどうせ気難し屋だからといって大目に許し、また神経質の方では、どうせあれには、難しい事をいってもわからないといって、あまりやかましくいわなくなる。お互いに許し合うから円満になる。(森田正馬全集 第5巻 p.729)」と言われたようなベストカップルだったのかもしれない。
残念ながら番組の中では幸之助の神経質の良さについて触れていなかった。神経質ゆえ、お客さんのニーズを汲み取って創意工夫をこらし、次々とヒット商品を世に出すことができたはずである。大成功しても決して奢ることなく常に反省し続けた点、不況になっても従業員を解雇せずそれゆえ従業員たちも懸命に働いて乗り切ることができた点、私利私欲の追及でなく社会貢献に努めた点などは神経質ならではだ。松下幸之助の自伝『私の行き方考え方』(日本図書センター)は多分どこの公立図書館にも入っていると思うので一読をお勧めしたい。
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