神経質礼賛 1663.鎂(マグネシウム)
昨夜、夕食を食べながら録りためたビデオを見ようと思ったら、妻がNHKの「ガッテン」を見たいというので付き合うことになった。「心疾患&糖尿病をダブルで予防!すごさ発見“あの栄養素”とは!?」というお題。いかにも健康番組好きの奥様方が飛びつきそうな話である。
マグネシウムという漢字「鎂」(金偏に美)があるとは初めて知った。マグネシウムは体重60kgのヒトが約30g持っている重要な成分だ。骨や歯の材料であるとともに、体内酵素の活性化作用がある。最近の疫学調査により、マグネシウムを多く含んだ食品を摂っている人では、心疾患発症リスクが3割減ったとか糖尿病の発症率が4割減ったというような発表が出ているという。とはいえ、薬の治験のように純粋にマグネシウム投与群と非投与群を二重盲検法で比較したデータではないので、マグネシウムだけの効果だとは言い切れないのではないだろうか。マグネシウムを多く含む食品は、豆腐や納豆などの大豆製品、海藻、魚介類、ほうれん草、玄米など、和食の食材たちであり、これまでも健康に良いとされてきているものばかりであるから、マグネシウム以外の成分が病気の予防に関与していることも十分に考えられる。現代の若い人では和食を食べなくなっているためマグネシウムが不足していて、さらにストレスが加わるとマグネシウムは尿から排出されやすくなってますます不足しがちになる。マグネシウム不足が2型糖尿病の一因になることは言われている。だからマグネシウムをもっと摂りましょう、という番組の主張はまあわかるが、安易にサプリや緩下剤(酸化マグネシウム)で摂るのは問題である。最近は、常用性がない安全な下剤として酸化マグネシウムのTV-CMが流れているが、639話「マグネシウムの摂り過ぎは危険」に書いたように、緩下剤の酸化マグネシウムを常用していてマグネシウム中毒に陥り死亡した例が報告されている。また、「にがり健康法」でにがりを多量に飲んでマグネシウム中毒のために死亡した事例もある。何でもほどほどが大切なのである。こういう健康番組に早合点してはいけない。
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