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2019年9月26日 (木)

神経質礼賛 1669.電話恐怖

 私は子供の頃から対人恐怖や強迫観念に悩んできた。対人恐怖の一部だと思われる電話恐怖もそうである。学生のうちはそれほど電話に出たり掛けたりは多くなかったが、会社員になって仕事中、頻繁に掛かってくる電話を受けるようになった。「ベルが2回鳴るまでのうちに出ろ」と厳しく言われていたから、仕方なしにとにかく掛かった電話を取りまくった。大抵は部長や課長宛ての電話だ。今から40年前のこと。保留ボタンを押して、「○○部長、経理部の△△課長からお電話です」と大声で告げなくてはならなかった。誰からかの電話かを聞き落したら大変だからとても緊張した。それに、相手から「△△です」と言われても役職がわからないとまずいので、よく掛かってくる人物はどんな役職にあるのか懸命に覚えようとした。職場の一角にデータ入力専門の女性(キーパンチャー)たちがいて、そこの女性宛てに通販会社から電話がかかってくることもあって、大声で呼ぶわけにもいかず困ったこともあった。そして、自分から掛けるのはさらに緊張した。社内のシステム開発のため、役員や部長や支店長クラスに電話で業務内容を聞いて確認しなくてはならないことが多かった。入社1,2年目の自分のような人間が偉い人に電話を掛けるのはプレッシャーが大きかった。しかも、そういった人は不在だったり電話中だったりすることが多い。折り返し電話をいただくのも失礼に当たるので何度も掛け直さなくてはならないのも苦手意識を高めた。それでも仕事であるから嫌でも何でも、電話を掛けまくったものだ。

 今でも、他の病院の医師に電話を掛ける時や患者さんの病状説明のために家族に電話しなければならない時は正直言ってとても緊張する。電話は相手の状態がわからないから、忙しい時で迷惑をかけはしまいかととても心配になる。しかし、やらなければならないことだから、とにかく電話番号を押す。後はどうにかなる。仕事が神経症を治してくれるのである。外来患者さんで電話恐怖だという人にお目にかかったことはないが、多分、対人恐怖の人では少なくないと思う。そういう人には、まさに「恐怖突入」(212話)が効果的である。

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コメント

恐怖突入。懐かしい言葉に出会いました。
私は対人恐怖ではありませんから電話恐怖はありません。けれども、212話を読んで、そうか、そうか、A氏の畑へ行けない恐怖というのはドキドキ感を含めてよーく理解出来ました。私も5m先ほどの郵便局へ行けなかった時期がありました。でも、今は軽快です。
しかし、バスはダメです。中野の鈴木知準先生の所を卒業してから40年。とにかくダメです。ダメで途中下車した事があって以来、乗っていません。あれから15年。
バス以外にも発表会で恐怖突入とばかりに頑張った事もありましたが、吐き気に襲われて実際医務室に運ばれた事もありましたから、今現在軽快でも、恐怖突入は私にとって文字通り恐怖以外の何者でもありません。
理屈はわかるのですが、頭でっかちなのでしょう、きっと。鈴木先生に叱られます。効果的。なんですね...

yukimiya 様

 コメントいただきありがとうございます。

 森田神経質の症状は実に多彩ですが、いずれもよりよく生きたいという「生の欲望」と表裏一体の「死の恐怖」・・・不安が根底にあるという点が共通しています。不安は生きている以上、決してなくなることはありません。ですから、症状はあっても必要な行動をしていくという姿勢で生活していくことが肝要です。現代の認知行動療法の曝露療法も森田療法の恐怖突入と重なる部分があります。
 ただし、神経質症状に加えてうつ状態があるような時には無茶はいけません。プールに飛び込めない人がいきなり高い競技用飛び込み台から飛び降りようとするようなものです。主治医の先生と御相談ください。歩いて買い物に行こうというような時に、たまたまバスが来たら、ダメでもともと、1区間でも2区間でもいいから乗ってみようか、という程度の軽い突入から始められたらよろしいのではないでしょうか。

故岡本太郎さんが「いいかい、怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」と言われたそうです。
その言葉が書かれた栞を、自分のノートに貼っています。神経症の自分の励みにする、というよりも、この口語調の勢いが気持ちよくて。あの風貌と太陽の塔も思い出されます。恐怖を情熱の源にした人なのかも。

夏子 様

 コメントいただきありがとうございます。良い言葉を教えていただきました。仰るように、恐怖をもエネルギーに転化しておられたのでしょうね。私も、岡本太郎さんと言えばあの個性的な風貌と太陽の塔を思い浮かべます。今まで、岡本太郎さんの名言に触れたことがなかったのですが、ちょっと調べてみると、「なんでもいいから まずやってみる。それだけなんだよ。」も神経質向きの名言のように思います。
 

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