神経質礼賛 1706.まず手を出して始める
神経質人間は行動する前にあれこれ考えがちである。失敗したらどうしよう、こんなことをやっても無駄なのではないか、時間や手間がかかって嫌だなあ・・・。良く言えば「石橋を叩いて渡る」であって、軽率な行動のために起こる損失を防ぐことができる。その反面、ああでもない、こうでもない、と頭の中を空転させて時間を空費してしまうとか、やろうかやるまいかと考えるだけで行動に移さず、「石橋を叩くだけで渡らない」になって、チャンスを逃すということも起きる。勉強になかなか手が出せないという学生さんや仕事の着手が遅くて仕事を溜め込みがちだという会社員さんの話をよく聞く。森田正馬先生は、まず手を出して始める、という話をした上で次のように言っておられる。
上に述べたような事は、気の軽い気質の人には、生まれつきで自然にできる。しかしそれは、単に軽率であって、まとまった努力の仕事はできない。
しかるに、気が重くて何事にもおっくうな神経質の人が、修養により捨身の態度ができて、気軽に手を出すという事ができるようになれば、それは一つの悟りのような状態であって、ただの軽率とは全く違う。例えば気の軽いのは、貧乏で金遣いが早いようなものだが、神経質のほうは、金持でよく散じ・よくもうけるようなものである。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.760-761)
ともすると、「どうすれば早く手が出せるようになるか」と質問する人もいるが、こればかりは理屈ではなく行動である。百の理屈より一つの行動なのであって、森田療法の本を何十冊も熟読しても実行しなければ何もならないのである。自分でまず一歩を踏み出す他に方法はない。そのためには神経質を生かしている人の気合いに触れるのは効果的である。入院森田療法や集団森田療法だけでなく「生活の発見会」のような自助グループで良い先輩をお手本にしていけば効果がある。そして、一つだけコツを言えば、小さなことで良いから手を付けやすい簡単なものから始めていくことだ。「神経質は重い車」と森田先生が言われたように、簡単には動かないが、わずかでも回り始めればしめたもので、より少ない力で回るようになるものである。そうなれば自然と行動の連鎖となってくる。
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四分休符先生こんにちは。
先生の母親の具合はいかがですか。
骨折はないということなので、良かったです。早く回復するといいですね。
私の場合はうつ病で動けない時は、近所に住む84歳になる母親が食べ物を持ってきてくれるという、親から面倒をみてもらうことがあります。
缶詰の買いだめやごはんパックの買いだめをして、うつ病に備えてはいますが・・・
NO1703の自信がないからできない・・・最初から自信があろうはずはない・・・という自らの患者の頭を縫う経験談はとても良かったと思いました。
青木薫久先生の処に入院して、強迫神経症を3年で全治した、上野さんという方も最初から自信がある人はいませんよという感じで、神経症で悩む人の相談に応じていました。
四文休符先生と全く同じことを言っているなと思ったしだいです。
今回の記事を読んで、神経症というものが、蓋然性のとても低い心配なことまで考えまくってその不安を排除しようとして、逆に精神交互作用で、不安にとらわれるということだと。
例えば親睦会の司会をして、対人緊張で疲労が溜まり、倒れたらどうしようとまでは一般人は考えないです。
話は変わって、発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの著者の杉山登志朗先生は浜松医科大学で働かれれいたのですね。
四文休符先生と同時期働かれていたのでは思います。
また、大学の教授とコラボして、岡本記念財団後援で、公演している動画もあります。
大学の教授は、森田療法で発達障害を支援するという先生です。
それで杉山先生がASDの強迫障害と森田の強迫障害はどう違うのですか?と質問している動画もありましたが、これは森田の強迫障害は、些細な心配ごとまで気になって、葛藤し、不安が強くなって行為を繰り返すのに対して、ASDはあまり精神葛藤は無く単に脳がこだわる性質のために強迫的に繰り返すで良いと思います。
虐待が脳を変えるの著者で福井大学の友田明美先生と同じ福井大学の客員教授として、杉山先生も名前が載っています。
岡本記念財団も、虐待が脳を変えるにも、協力してくれればと思ったりします。
いずれ友田先生、杉山先生宛に手紙を書こうと思っています。
私も、発達性トラウマ障害と複雑性PTSDという精神疾患があるのだということを、少しでも知ってもらうために、アメーバブログを始めました。
投稿: KY | 2020年1月17日 (金) 12時05分
すみません。途中で四文休符先生と字が間違っていました。
正しくは四分休符先生でした。
杉山先生が質問していた大学教授は松浦先生です。
ちょっと、杉山先生と松浦先生の動画を貼りつけてみましたが、うまくいかなかったらごめんなさいです。
<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/bFiIjeQ6VzE" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen></iframe>
投稿: KY | 2020年1月17日 (金) 12時18分
YouTubeの貼りつけうまくいかなかったです。
URLを貼りつけました。
杉山先生と松浦先生の討論です。
https://www.youtube.com/watch?v=bFiIjeQ6VzE
投稿: KY | 2020年1月17日 (金) 12時24分
KY 様
コメントいただきありがとうございます。
御心配いただき恐縮です。母は昨年末に療養型の病院に移り、リハビリ中です。もう88歳なので厳しい面はありますが、何とか施設ではなく家に帰したいと考え、1階にベッドを入れるなど、少しずつ受け入れ準備をしているところです。
強迫症状は発達障害だけでなく、精神遅滞にもしばしばみられます。当然、神経質のような葛藤はありません。
投稿: 四分休符 | 2020年1月18日 (土) 23時05分
四分休符先生、こんにちは
先ず、手を出して始めてしまうについてです。
私は、スマホのキャリアと遠隔サポート契約を結んでいます。
スマホやパソコンの遣り方がわからない、は随時あります。
じっくり考えれば、不明な操作方法も分かったり、また、ググってしまったり、ユーチューブで操作方法を調べたりするのもあると思いますが、キャリアに電話をして、遠隔サポートのお世話になります。
オペレータの矢印がスマホやパソコンに入り込んで、操作してくれながら、自分はオペレータさんに遣り方を携帯電話で聞いたり、普段からの疑問点を質問したりします。
そうこうしているうちに、頭が暖まって、やる気が湧いて来ます。
そのウオーミングアップを終えてから、余勢をかって、次の嫌な片付け仕事に移ります。
但し、寝不足の日は、全く能率が上がりませんし、そもそもやる気が出ません。
一番捗るのは、電車の中で、敢えて立ちながら、メールを打ったり、面倒な書類に目を通したりします。
面倒な書類に目を通すのも、鉛筆で線を引いたり、書き込みながらのアウトプットをすると集中力が増します。
立ちながらの方が頭が働くように感じます。
根性論や精神力は余り当てにしていません。
投稿: 才谷梅太郎 | 2023年4月 9日 (日) 22時11分
才谷梅太郎 様
気が焦るままに、少しでも手を出すと、呼び水のような効果が出て、意外とうまくいくものです。「電車の中で敢えて立ちながらメールを打ったり面倒な書類に目を通す」はまさに森田的仕事法だと思います。
投稿: 四分休符 | 2023年4月10日 (月) 08時34分