神経質礼賛 1720.すなほの心
前話の山野井さんの場合は森田先生に言われるまま素直に従って行動することで大きく道が開けたわけであるが、その通りにいかない人もいる。あくまでも症状にしがみつき、病気のせいにして行動しないで逃げていたのでは治るものも治らない。森田先生は次のように言っておられる。
素直・従順・「はからはぬ心」とかいふのは、「自然に服従し、境遇に従順なる心」である。
例へば、親に師に戒められ、命ぜられる事は、或はこれを無視と思ひて、腹立たしく・疑はしく・反抗の氣分が起らうとも、先づ其まゝに・仮りに・試みに・其いふ通りに従ふ事である。又自分の職務や事業に対しては、或は人に対する不平・呪ひや・或は自分の能力に対する疑惑・不安があらうとも、其まゝに、自分の仕事に、其日々々と、かじりついて行く事、又或は頭重や不安の悩みがあつても、医者が診断して、勉強しても差支なしといへば、疑い懼れながらも、先づ試みに、其医者のいふ通りにする等の事が、即ち素直の心である。(中略)
素直な心ほど、安楽なものはない。それは間違のない事実・其ものに従ふからである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.440)
森田療法では素直な人ほど治りが早いということがよく言われる。注意の集中→感覚の鋭化→意識の狭窄→注意の集中・・・という無限ループ(精神交互作用の悪循環)からいち早く抜け出せるからである。そして、それには治療者の正確な診たてと的確な助言が必要であることは言うまでもない。治そうとする人と治療者の共同作業で砕啄同時(440話)ということになってくるのだ。
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森田療法の「素直な心」は、一般的な意味とちょっと違い、「素直な心」で行動していくのは、普通は「安楽なもの」という表現には結び付きにくい苦しいことだと感じます。同時に、その表現に森田先生の気合も感じます。良いお話を聞かせて頂きました。
私は「素直な心」が足りなかったので、治りが遅いです。長い時を要したけれど治った人のことをそのうち聞かせてもらえないでしょうか。「治療者の正確な診たてと的確な助言が必要であることは言うまでもない」とお考えになるお医者さんと縁のある患者は幸せです。
数日前から「森田正馬全集第5巻」を読み始めました。
投稿: 夏子 | 2020年3月 1日 (日) 11時38分
四分休符先生、うなずきました。
素直なこころです。私は、素直ではないです。家人によく「ハイ」じゃないんだね。と言われます。家人は「ハイ」の人です。でも物事の本質を極めた、コアを持った人でもあるのです。
私は思いました。私の母がやさしく、人当たりの上品な人だと皆から言われますが、「ハイ」の人では、決してないのです。もう、70年近く音に敏感でよそ様からの音に「干渉だ」とか「殺人だ」と言って私がそっと心療内科の先生が理解して下さるわよ、と言うと「私はあんたとは違う。神経症なんかじゃない。治すという問題では無い、近所の過干渉だ」と言ってきました。どれだけ家族がそのために悩んだか...
いろいろな要因があるものの、私の神経症の背景にはこうした家庭環境にもあるように思えます。
家人と居るとホッとします。本当は長年住まっていた母との時間を多くしたいのですけれども。良い人なのだけれど、素直ではないのですね。残念です。
私は家人から、素直さを学んでいます。
投稿: yukimiya | 2020年3月 1日 (日) 16時44分
夏子 様
コメントいただきありがとうございます。
御明察です。仰る通り、行動する、働く、というところまで行って、初めて、「素直な心」となります。そして、その時には「あるがまま」になっているのです。「安楽」も何もしないでごらごろしているラクチンではなく、心身が滞りなく自在に動いていることを言うのだと考えられます。
御自分はまだまだ駄目だ、とお考えになるのは真性の優れた神経質である証拠です。全集第5巻を読まれると、森田先生をはじめ優れた神経質の先輩方の「気合に触れる」ことができるかと存じます。
投稿: 四分休符 | 2020年3月 2日 (月) 22時27分
yukimiya様
私の母も外面(そとづら)は良いのですが、素直の心が足りない人で近所の人の悪口はしょっちゅう言っていますね。そして、私にも似た部分があるなと時々反省する次第です。
投稿: 四分休符「 | 2020年3月 2日 (月) 22時38分
先生、励ましていただいて誠にありがとうございます。
440話も拝読しました。
症状は相変わらず強いですが、これも自然現象なのでしょう。
辛さが先に立ちますが、ほんの小さな進歩でも、自分で進歩だと認めることも大事なのかも。
まったく遅々たるあゆみですが、今日一日やれることはやってみます。
投稿: 夏子 | 2020年3月 3日 (火) 07時49分