神経質礼賛 1742.理屈はわかるが実行できない
神経症には普通神経質(不眠、頭痛、胃部不快感、めまい感、書痙など)、発作性神経症(不安発作、動悸、呼吸停止発作など)、強迫神経症(対人恐怖、不完全恐怖、疾病恐怖、不潔恐怖など)と実に多彩な症状があるけれども、森田療法による対処法は実に単純明快。症状はありながらも不安を抱えながらもそれはそのままにして(⇒あるがまま)やるべきことをやっていく(⇒行動本位)という一点につきる。これを実行した人たちはどんどん良くなっていく。一方、理屈倒れで行動しないためになかなか脱却できない人たちもいる。森田先生のもとにも、『根治法』を読んで、理屈は解りますが、実行が出来ません、という手紙を送ってきた人がいて、それに対して先生は次のように返事をされている。
貴方のいふ事は、結局、本を読んでも、対人恐怖が治らない・といふ事でせう。それは夏は暑いといふ理屈は解つたが、どうしても涼しいと思ふ事は出来ない・といふと同様です。暑いのは、どうしたつて暑い。人前では恥かしい・きまりが悪い・それは吾々の心身の事実であるから、どうする事も出来ない。どう思へば・よいかといふ事はない。耐(こら)へても耐へなくとも、思つても・思はなくとも、暑い事に相違ない、又例へば、急に発熱して、四十度になつたとする。苦しい。どうしたつて、苦しい事に相違ない。これを・どう考へればよいかとか、理屈をいへば・いふほど、益々苦しくなるばかりである。(白揚社:森田正馬全集 第4巻 p.49)
ともすると、森田療法関連本を二、三十冊読んだが良くならないと言うような人もいる。森田先生の養子で三島森田病院の創業者・森田秀俊先生は「理屈はいらない。理屈は役に立たない」と患者さんを指導されていた。私は「百の理屈より一つの行動」と言っている。なかなか実行できないという人へのアドバイスとしては、まず手の付けやすい小さなことから始めてみることだ。行動してみれば小さくても成果が得られてそれなりの達成感がある。神経質人間は生の欲望が強く発展向上欲が強いので、その小さな行動が呼び水・起爆剤となって、次々と行動の連鎖となっていけばしめたものである。いつしか気が付けば症状をすっかり忘れている。
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四分休符先生
いわゆる恐怖突入でしょうか。
私の今通っている先生は恐怖突入を言われません。今のままで、もうかなり軽快ですし、機会があれば、電車・バスも良いかもしれませんよ、乗れなくても生活に困らなければいいのです。とノンビリとしたアドバイス。
鈴木知準先生の元に居た時は皆で恐怖突入が合い言葉の様になっていましたが...
生欲・向上欲が強い神経質人。そう言われますと、克服した時、嬉しいですね。本来の力が発揮できそうな感じがします。さて、いつなりますやら。死ぬまで無理かもしれません。でも、それも又人生と考えましょう。
今現在、向上心がある神経質人と考えます。悪くない、です。
投稿: yukimiya | 2020年5月 4日 (月) 06時48分
yukimiya 様
コメントいただきありがとうございます。
森田正馬先生もお若いうちは「恐怖突入」を言っていたのがだんだん言わなくなっていった、と山中和己さん(メンタルヘルス岡本記念財団理事・生活の発見会顧問)が仰っていたように思います。私も若い頃は恐怖突入を避けて病室のベッドに寝ている人を叩き起こして強引に畑に引っ張り出すようなヤクザなこともしていたものですが、今ではだいぶ丸くなりました(笑)。yukimiya様の主治医の先生と大差がなくなっているかもしれませんね。とにかく行動するかしないかで治療効果に大差が出ますから、若いうちはつい力が入ってしまいます。知準先生の場合は年齢を重ねられて円熟の境地に達してからも精神的な若さとパワーを維持していらっしゃったのだと思います。
投稿: 四分休符 | 2020年5月 6日 (水) 07時16分