神経質礼賛 1779.コロナうつ
今日の毎日新聞夕刊を広げてみると、第2面特集ワイドが「コロナうつ 希望で予防」という見出しで心理カウンセラー植西聡さんのインタビュー記事だった。「見えぬ終息が引き起こす」「情報得ないことも重要」「プラス思考 訓練で習慣に」という3つの小タイトルがある。不眠や不安を訴える人、リモートワークなどへの不適応を起こす人が増えているという現状が述べられ、感染に関する話題や景気悪化や雇用不安を扱ったニュースを見過ぎないよう注意すること、発想を変えてプラス思考で乗り切る、というアドバイスが書かれていた。
私は今年の4月に新しい病院に移ってから、新型コロナの影響を受けた患者さんたちを診てきた。それまで熱心に地域の活動をしてきた高齢者が急に引きこもり生活になってみるみるうちに元気がなくなり食欲も落ちて受診してきた例、新型コロナのために仕事が減って収入が減少して気分の落ち込みと強い不安・不眠を訴える例、などは典型的なコロナうつと言えるだろう。うつではないが、自分は新型コロナに感染しているという妄想にとらわれて家族に連れられて受診した人もいて、精神科でも新型コロナの影響は大きい。
毎日、感染者数やクラスター発生のニュースを見ていると気が気ではないけれども、神経質としては目を塞がず正しい情報を集め、対処していきたい。そして、種々の制約の中でできることを積み重ねていき、楽しめることも探していく、という姿勢で日々を過ごしていきたい。家族や友人と直接会えなくなっているけれども、SNS(私は使わないが)やメールなどの手段を使って交流し、孤立しないようにしよう。スマホやパソコンを使わない方は絵手紙もいいだろう。いつかは終息する日がやってくる。
« 神経質礼賛 1778.ショパン200年の肖像 | トップページ | 神経質礼賛 1780.それでも神経質礼賛 »
私が神経症になった最初の一年くらいはいくつもの症状が出て、もっとも苦しかったもののひとつがエイズ恐怖でした。地下鉄の駅に貼られていたエイズ対策の啓蒙キャンペーンのポスターを見たとたん、雷に打たれたように恐怖に襲われました。陰性と言われてもなかなかよくなりませんでした。でも、その後森田療法を知り、「森田」がもっともよく効いたのがエイズ恐怖だったように思います。ふらふらとなりながらあるがままに、掃除、洗濯、散歩といった家事・日常生活をし、がんばってアルバイトをしたりした歳月の中でエイズ恐怖は消失しました。
コロナ禍となり、コロナ恐怖になる人がきっと出るだろうな、と案じていました。せっかく早いうちに「森田」を知ったのなら、適切な態度を身につけて(偉そうなことは言える私ではないのですが)、あまり長く苦しまないでほしいです。
投稿: 夏子 | 2020年9月18日 (金) 22時31分
夏子 様
コメントいただきありがとうございます。
神経質人間は「生の欲望」が強く、よりよく生きたいと願います。それゆえ、人一倍病気を恐れます。「生の欲望」と表裏一体の「死の恐怖」であります。森田正馬先生の時代には肺病(結核)恐怖や籟病恐怖や梅毒恐怖の人が多くいました。その後、時代とともに恐怖の対象となる病気は変遷していき、私が研修医だった頃はAIDS恐怖の方が多かったように思います。そして今は新型コロナです。病気を恐れて感染しないように注意するのは大変良いことなのですが、必要以上に恐れて日常生活が立ち行かなくなってしまっては本末転倒です。仰るように、日常生活の中で仕事に取り組んでいくことが過度の恐怖から脱却する特効薬であります。同じ悩みに苦しんでいる方々が特効薬の存在を知ってくれるといいですね。
投稿: 四分休符 | 2020年9月19日 (土) 22時17分