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2020年8月16日 (日)

神経質礼賛 1776.心理士さんの仕事

 精神科の病院やクリニックでは他の科とは異なるスタッフが仕事をしている。相談業務や他の機関との連携・調整を行う精神保健福祉士(PSW)さん、作業療法やデイケアを担当する作業療法士(OT)さんは患者さんやその家族が接することが多い。謎に包まれているのは心理士さんではないだろうか。心理士さんというと、TVドラマの世界では犯罪プロファイリングを行ったり犯罪者の嘘を見破ったりして大活躍するイメージがある。また、災害や大きな事件が起きた後に学校の生徒さんたちを支えるスクールカウンセラーを思い浮かべる方もおられるだろう。医療機関ではどんな仕事をしているか御存知の方は少ない。

 医療機関で心理士さんの仕事はまず、心理検査である。知能検査や発達障害を調べる検査は精神科だけでなく、小児科でも必要なので、大きな総合病院では常勤の心理士さんを配置している場合がある。エゴグラムやY-GやSDS、あるいは改訂長谷川式認知症スケールのような簡単な検査は医師が自分でやってしまうこともあるけれども、ロールシャッハテストは熟練した心理士さんでなければできないし、WAISなどの知能検査も心理士さんでなければ困難である。前に勤務していた病院では週2回、心理士さんがパートで来ていて、検査をこなしてくれていた。かつては常勤の心理士さんがいたこともあったけれども、心理検査だけでは仕事が少なく、病院からの給与だけでは生活が厳しいということもあって辞めていかれた。現在勤務している病院では私と同時に常勤の心理士さんが採用になって、心理検査とともに外来のカウンセリングも行っている。ただし、保険診療ではカウンセリングの追加料金をいただくことはできないので、実質的にはサービスになってしまい、採算が取れるわけではない。

 従来、日本では心理士の国家資格がなく、民間の臨床心理士という資格が主だった。2015年に公認心理師という国家資格がようやくできたばかりだ。重要な専門職であるにもかかわらず、保険医療で心理士が報酬を得られる部分が少なすぎる。常勤で働く場も少なく、大学で教員をしながら医療機関でパート勤務、という心理士さんも少なくない。大都会ではカウンセリングルームを開業している人もいるけれどもまだまだ少数派である。もっと、心理士さんたちが活躍できてそれに見合った収入が得られるようにしてほしいと思う。

 なお、日本森田療法学会では令和2年4月現在、私も含めて50名の学会認定医と26名の学会認定心理療法士さらには17名の学会認定指導員がいて、心理士さんによる学会発表も少なくない。森田療法に関しては本来、医師も看護師も心理士も作業療法士もない。医療と言うより教育としての面が大きいからである。現に水谷啓二さんのように森田正馬先生の教えを伝え、立派に森田療法を実践された方もいる。水谷さんが創立された生活の発見会も健在である。

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