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2020年9月24日 (木)

神経質礼賛 1789.裸にて生まれて来たに何不足(1)

 文字ばかりの森田正馬全集第5巻に図が入っているページがある。131ページの身家盛衰循環之図である。形外会の場で貿易商の香取会長が薬屋の守田治兵衛(宝丹)の話を紹介した。守田は江戸時代前期から続く薬舗を継いだが事業に失敗して無一文となり死に場所を求めて旅に出た。しかし安宿の部屋に書かれた表題の一茶の句を目にして思い返し、東京に帰って猛烈に働いたという。そしてコレラの予防薬とされる宝丹というヒット商品を世に出して大成功した。「人生は七転び・八起きである。自分などは逆境のために、いつ裸になるかわからない。この不安はいつまでも、とれるものではない。それが人生の当然の事であります」と香取さんが語ったのに対して、森田先生は自分の学生時代の備忘録を取り出し、下宿屋の額から写したという守田宝丹の身家盛衰循環之図を披露している。二重円の中央に「心」と書かれ、10区画に分かれた外側には勤苦、節度、積貯、富足、驕慢、奢侈(しゃし)、淫暴、禍愛、困窮、悔悟と書かれている。特に森田先生のコメントはない。これらの心理的な変遷は多かれ少なかれ誰にでも起こりそうである。成功すれば驕慢になるし、失敗すれば悔悟する。ただ、反省心が強い神経質の場合には驕慢の度合いは低く、常に自分はダメだ、と思って努力していけば着々と実績を積み上げていくことになる。何はなくても命があるだけでもありがたい、そう思ってできることをやっていけば良い。そしてよりよく生きたいという「生の欲望」に沿って行動して生き尽くしていく。人間は本来無一物でもあり無尽蔵でもある。

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