神経質礼賛 1820.済度(さいど)
先週、歩いて近くのスーパーに行ったところ入口が閉まり中は真っ暗だった。どうしたのかと思ってドアに貼られた張り紙を見れば、「当店の従業員一名が新型コロナに感染したため1月3日まで臨時休業します」とある。ついに身近なところまで迫ってきたか、と恐ろしくなる。強力な感染力を持つ変異株がイギリスから日本に持ち込まれたとか、まだ53歳の国会議員が新型コロナで急死したとかいったニュースも流れる。状況は悪化している。ワクチン開発が進み接種が行きわたることに期待したいが、ワクチンが効かないような変異株もどんどん出てくるだろうから、来年中に収まるというような楽観はできない。つい内向きになり不安にさいなまれがちだけれども、よりよく生きたいという「生の欲望」に沿って、感染を恐れながらも不安なまま限られた中で日常生活を充実させる工夫を重ねて行動していくことが重要である。神経質は恐怖や不安を拡大視して自分ばかりが苦しいと思い込みがちだけれども、誰もが苦しみながら生きているのだ。
神経質の唯我独り苦しいといふ心持は、一度び其心境を転回して、自己の素質の長所に覚醒した時には、之が直ちに唯我独尊となるのである。此心は、即ち人を恨み、自分をかこつ卑屈の心ではない。自分の全力を発揮し、人をあはれみ、周囲を済度する力であるのである。(白揚社:森田正馬全集 第2巻 p.91)
恥ずかしながら済度という言葉を知らなかった。仏教の言葉で、菩薩が迷い苦しんでいる人間を救い(済)、悟りの彼岸に渡すこと(度)なのだそうだ。仏道が衆生済度(しゅじょうさいど)であるように、森田先生の教え・森田道は神経質済度のありがたい教えである。少しでも多くの人に知っていただけたらと思っている。
他愛無い駄文を毎月10話ずつ書き続けて丸15年経ちました。一度動き出したら簡単には止まらない神経質のなせる業かと思います。お読みいただきありがとうございます。皆様、よいお年をお迎えください。
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