神経質礼賛 1830.朝の満月
朝夕、駅のホームで20分ほどじっと電車を待っているとすっかり体が冷え切ってしまう。風が強い時は早く電車が来てくれないかと待ち遠しいが、そんな時に「雪のため遅れています」などとアナウンスが入るとガッカリである。それでも、朝も夕も明るくなってきた。来週は寒さが緩んでくるとの週間予報である。春遠からじといったとことだ。
昨日の朝はホームからふと見上げると、西の空、阿弥陀くじのように見える架線の間をゆっくりと満月が下りていくのに気が付いた。電車を待っている間にずいぶん動いていくものだ。ふと、与謝蕪村の俳句「菜の花や 月は東に 日は西に」を思い浮かべる。おっと、これは逆パターン、夕方の情景だった。蕪村が夕刻に六甲山地から一面の菜の花を眺めながら詠んだ春の句だという。俳句作りがうまい人だったらこのホームから見た光景できっと何か一句ひねるに違いない。冬の月 引くや架線の 阿弥陀くじ。これではちびまる子ちゃんのおじいちゃん友蔵さんレベルの俳句だなあ。などとあれこれどうでもいいことを考えているうちに電車がホームに入ってくる。しばしの間、寒さを忘れていた。「心は万境に随(したが)って転ず」(300話)である。いろいろなことはあっても毎日は何とか回っていく。これでいいのだ。
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