神経質礼賛 1834.安宅(あたか)
先日のオンライン飲み会では、自分の部屋が映ってしまうので見苦しいものが映っていないか気になった。私の居場所となっている三畳間は本来、書庫スペースである。しかし、ドラッグストアやホームセンターで安売りの時に買ってきたトイレットペーパーやティッシュペーパーやマスク類、最近ではさらに母親用のライフリー紙パンツ・尿パッドなどが積み重ねて置かれているからとんでもないことになっている。これらは映らないように低い位置に置く。作り付けの大型書棚には医学書・森田関係本・雑誌類・電子回路関係の本などが詰まっているが、異質なのが20年前に家を新築した時に叔父からお祝いとしてプレゼントされた人形である。置く場所に困って、書棚の一角に鎮座させている。これも画面に映らないように気を付けた。
人形は「安宅」という題名になっており、能の「安宅」、つまり兄・頼朝に追われた源義経が安宅関で捕まりそうになるところを弁慶の気転で危うく逃れる場面、にせの勧進帳を読み上げる弁慶の姿である。私は新築祝には不適切なものではないか、と長年思っていた。義経は頼朝の命を受けて宿敵の平氏を滅ぼしたが、後白河法皇から官位官職を受けたことが原因で、頼朝から謀反の疑いをかけられ、逃避行の末、平泉の藤原秀衡を頼るが、秀衡亡き後、息子の泰衡に攻められて自害する。最期まで義経を守り通した弁慶も全身に矢を受けて立往生して果てる。苦労して大成功を収めた英雄が大転落して哀れな最期を遂げるわけで、どう考えても縁起が悪い。神経質人間はこだわりやすく縁起を気にしやすい。普段からこの人形の顔を見ないようにしていた。
ところが、最近、中部地方のニュースで石川県の安宅住吉神社では受験生向けのお守りを売り出して評判になっていると知った。義経追捕のための厳重な関所を弁慶の機智と度胸で突破したことにちなみ、全国唯一「難関突破」のお守りだそうだ。結局、物は考えようということなのである。どうも私は深読みし過ぎていけないと反省する。縁起かつぎは都合の良いところだけをピックアップすればよいではないか。これからは大ピンチに陥った時にはこの人形の弁慶を見て突破を試みようと思う。
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