神経質礼賛 1871.筋肉注射の方法(2)
先日の病院職員の予防接種の際には、私の役目は問診と万一の場合への待機で、実際に注射を打つのは看護師さんだった。今週から高齢の入院患者さんへの接種が始まった。今度は医師が問診して注射を打つ。以前書いたように(1843話)、インフルエンザワクチンの注射は皮下注射だったので、やり方がだいぶ違う。精神科医が筋肉注射をするのは、興奮が著しいとか拒薬していて内服不能の患者さんに対してであって、部位は安全性が高い臀部であり、私は今まで肩に注射を打ったことは一度もない。やはり心配なので、公的なサイトで公開している新型コロナワクチン接種の注射手技の動画を繰り返し見て確認する。
肩に筋肉注射する場合の部位は、従来は肩峰から3横指下というように言われてきた。しかし、動画を見ると、それよりも3-4cm下、前腋窩と後腋窩を結んだ線と肩峰から下に引いた線の交点を目標に打っている。外国でのワクチン接種のニュース画像でよく見る部位である。また、血液の逆流かないか軽く引いてから注入するのが伝統的だけれども、それはかえって良くないとのことだ。
昨日は精神科救急の当直勤務。未明に新患の診察依頼があり、入院となった。日中と違って、スタッフが少ないし、病棟に入れる前にコロナ検査もしなくてはならない。例の青い使い捨てガウンやキャップやフェースガードなどを身に着けて鼻腔内の液を採取する。検査キットで結果が出るまでには20分ほど要する。処方した少しばかりの薬を出すのにも、事務当直者と二人で薬局に入って薬を探し出し、いろいろと時間がかかる。患者さんが病棟に入った後も種々のオーダー入力や書類作成に追われる。ようやく電子カルテ上の仮名「救急桜」さんの入力が終わったのは午前3時過ぎだった。仮眠を取ってから朝6時過ぎに病棟を巡回。電子カルテに回診記録を入れる必要のある患者さんたちがいるためだ。電子カルテになってからというもの、医師の仕事量は増えていて、いつも目はショボショボ。常時、電子カルテに追われている感じだ。病院勤務はそろそろ潮時かなあ、と思うこの頃だ。
さて、午後からはいよいよワクチン接種。ワクチンを希釈して注射器に詰めるまでは薬剤師さんと看護師さんがやってくれてある。注射針の長さを確認しておく。約30㎜と長い。痩せた人だと上腕骨に達する恐れがあるから注意しなくては。患者さんの問診をしていると、精神科ならではの答えが返ってくる。「私は妊娠してるんですよ」と真顔で言う70代女性。もちろん妄想である。60代男性はこれだけ暑くなっても服を5枚も重ね着している。支離滅裂な言動を続けてなかなか服を脱いでもらえず注射させてもらうまで一苦労。そういう人ばかりではなく、協力してくれる患者さんも多いから助かる。無事に打ち終わり、ほっとする。
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お疲れさまでした。お医者さん、看護師さんって、本当にすごいと思います。家族や自分が世話になって、そのお姿を見ていると、そう思います。
リムスキーーコルサコフの交響組曲「シェエラザード」作品35、先生はお好きでしょうか。私は、今までもっとも感動したクラシックかも。演奏中、思わず言葉にならないような声が出てしまいました。ヴァイオリンの独奏がしっとりしていて、うっとり。力強いところとのコントラストが印象的でした。
投稿: 夏子 | 2021年6月 4日 (金) 19時45分
夏子 様
コメントいただきありがとうございます。
リムスキー=コルサコフについては309話「ムソルグスキーとボロディン」の中に少し書いています。交響組曲「シェヘラザード」の中の独奏ヴァイオリンは王妃のテーマを奏でています。繰り返し出てきて少しずつ変化していて、次々と異なる物語を語って王を飽きさせないのと同様、聴衆の心を捉える名曲に仕上がっていると思います。ヴァイオリンの重音奏法が巧みに使われています。ヴァイオリン用の編曲物のCD伴奏を持っているので弾いてみようかと思います。
投稿: 四分休符 | 2021年6月 5日 (土) 23時39分