神経質礼賛 1878.自分だけが苦しい
神経症には実に多彩な症状がある。対人恐怖、不眠、強迫観念、不安発作、頭痛・腹痛・動悸など種々の身体症状、と多岐にわたる。そしてそれらの複数の症状を持つ人もいる。一見異なるように見えるそうした症状の根底には不安がある点が共通している。そして、そうした症状に悩む人たちの共通点として、「自分だけが苦しい」と信じていることである。森田先生は次のように言っておられる。
神経質の苦痛も、自分に比べて人を推し計るとよいけれども、とくに神経質は、自分と人との間に隔てをおいて、自分は勉強すると苦しいけれども、人は朗らかに愉快に勉強しているとか、人前で恥かしいのは自分ばかりで、人はみな気楽でうらやましいとかいう風に、人に対して全く同情というものがない。会の世話のような事でも、人には無理な苦しい事をさせても、自分ばかりは楽にしようとするような人情になるものである。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.697)
森田療法で入院している人たちの日記を見ていると、症状は書かないようにと注意していても、最初のうちは症状の愚痴が出て、他の人たちは何でもないのに自分だけが重症で辛い、といった表現がみられる。しかし、いろいろな作業を他の人と一緒にやり、サブリーダーやリーダーといったまとめ役をやるようになって、周囲に目が行くようになると、他の人たちも大変なんだなあ、苦しみながらもがんばっているんだなあ、ということに気付くようになる。「自分だけが苦しい」という差別観から脱却して平等観で見ることができるようになってくる(631話、1312話)。そうなってくれば大きな前進である。生活の発見会で集談会の幹事や世話役をされている方々もそうした体験をしておられることと思う。後は症状はありながらも苦しいままに行動していくだけである。やがて結果はついてくる。そして苦楽共存(200話・1475話)ということにもなってくるのである。
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