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2021年9月30日 (木)

神経質礼賛 1910.危険な食べ物

 危険な食べ物、と聞いて皆さんは何を連想されるでしょうか。
① 着色料や保存料など人体に有害な化学物質や発がん性物質などを含んだもの。
② 食べると一瞬は美味しいけれども、少し遅れて辛くて涙が出るような激辛食品。
③ 味は良いけれども、強烈な臭いを発して周囲に迷惑必発のクサヤの干物、ドリアンなどの食品。
④ 女性の場合、美味しいスイーツ類。食べ出したら止まらなくなり、体重計恐怖症を発症させる食品。

人によっていろいろあるだろう。私の妻は①に極めて敏感で、頂き物、冠婚葬祭の引き物は厳重にチェックをして怪しいものが少しでも入っていそうだと即、廃棄処分になる。私も神経質だけれども、①に関してはそこまでではないし、食品を捨てることには抵抗を感じるので、処刑前にこっそり救出して当直の時に食べて消費している。

 別の意味で危険な食べ物がある。昨日の病院食はスパゲティミートソースだった。以前の勤務先だとあらかじめ麺の上に具材が載っていて、電子レンジで温めてそのまま食べられたけれど、今の勤務先では、袋に入った麺をラーメン屋のような小さなザルに入れて湯の中でほぐし、湯切りをして皿に移し、それに具材をかける。セルフサービスである。温かいし麺もみずみずしくてよいのだが手間がかかる。さて、食べる段階で問題が発生することがある。箸で麺を持ち上げた時に麺が跳ねて小さな具材が白衣の上に飛ぶことがある。こうなると極めて厄介だ。濡れたティッシュペーパーで何度も拭き取ろうとするがケチャップの赤色は簡単には落ちないのだ。同様に、美味しいカレーうどんも汁が飛んだら厄介であり、⑤白衣の敵・危険な食べ物の両横綱と言っていいだろう。ハンカチを広げて食べればよかったなあ、といつも後悔するが、どうも学習効果がなくていけない。

2021年9月26日 (日)

神経質礼賛 1909.新なる装備品

 「あれ、先生は付けていないんですか」と薬局長から注意を受ける。個人用の消毒液のことである。見れば、薬剤師さんや外来の看護師さんたちは小さな消毒液のボトルを白衣のポケットからぶら下げている。何しろ院内の至る所に消毒液が設置してあって、いつでもすぐに使えるので、持ち歩かなくても困ることはないから今まで気にしていなかった。「外来の看護師さんに言えばもらえますよ」と言われて一つもらう。ポケットに引っ掛ける金具にはピンクのウサギさんの絵が描いてある。女性看護師さんには似合うが、初老の男にはどうも似合わない。しかし言われたからには院内では身に着けることにする。実際に付けて歩いているとボトルが手に当たるし、ドアにも当たりやすい、という難点がある。

こうした装備品は一つ一つは軽くても、いろいろ持っていると白衣が重たくなって肩が凝る。ただでさえ心配性の神経質ゆえ、ポケットにはいろいろ入れてしまいがちだ。胸ポケットには黒ボールペン・多色ボールペン・シャープペン・ラインマーカー・小型ペンライト、左ポケットには毎年百均で買っている薄い手帳に種々の(現在担当中の入院患者さんの一覧など)縮小コピーを挟み、付箋紙の予備を張ったもの・院内PHS、右ポケットには病院のマスターキーと自室の鍵・三文判とシャチハタ印。電子カルテになる前はさらに定規もポケットに入れていた。消毒液が加わりトータルでは意外と重量がある。精神科医は聴診器を首にぶら下げて歩く習慣がない。徒手空拳、身一つで言葉だけを武器に勝負するのが本分なのであるが、そうも言っていられない御時世になった。

2021年9月23日 (木)

神経質礼賛 1908.できぬといふはしたくなきが為なり

 バリバリの強迫神経症の人を外来で診ている。本人の希望により薬物療法なしの外来森田である。日記は一応書いては来るが、診察日の朝に数日分まとめて書いている。強迫の人の日記は一目でわかる。ノートにびっしり書き込んでくるが、どうでもいいことばかり細かく書いていて、一日の流れがわかりにくい。そして、必ず欄外にはみ出すのである。もっとスカスカでいいから、必ずその日の終わりに書く、それができない場合にはせめて翌朝書くように、と外相を整えるように注意するが、なかなか実行してくれない。日常生活も日記の通りで、万事が本末転倒。優先度の高い課題があるのに、それは先送りにして、強迫の儀式ファーストであるから、日常生活がなかなか改善しないのだ。「今回もできなかった」の繰り返しになってしまう。「人のすることに出来る出来ぬの別あることなし できぬといふはしてくなきが為なり(森田正馬)」とコメントを書いておく。森田先生の色紙にある言葉だ。

 この言葉はJ.F.ケネディ大統領も尊敬した江戸時代の名君・上杉鷹山の「なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり」が元と思えるし、さらには戦国時代の武田信玄の「為せば成る 為さねば成らぬ成る業を 成らぬと捨つる人のはかなき」という歌もある。神経質の場合、できないと決めつけていろいろ言い訳をする。何だかんだ理屈を付けたところでそれは「したくなきが為」という気分本位なのである。そして、恐ろしいことに、この言葉はブーメランのように自分に返ってくるのだ。お前はやるべきことから逃げていないかと自問する。

2021年9月19日 (日)

神経質礼賛 1907.LINE超初心者

 もう長いこと県外に出ていない。来年は精神保健指定医を5年に一度更新するための講習会に参加しなくてはならないので、その時には久しぶりに東京に行くことになる。子供も帰省を避けているから会っていない。以前勤めていた病院の先生が、離れた家族で連絡を取り合うにはLINEが便利だと言っておられたのを思い出して、そうだ、LINEやってみよう、ということになった。書店で目に付いた「世界一やさしいLINE」という入門書を買ってくる。しかし、読んだだけではどうもよくわからない。とりあえず、アプリをダウンロードして設定。子供からは「LINE始めたんですね」というメッセージが来る。また、ピアノの伴奏をしてくれる親友からはスタンプが送られてきたが、どうしていいのかわからない。とりあえず、「友だち自動追加」をオフに設定し直す。まだまだこれからだ。

 これを読んでいる方々には笑われるだろうなあ、と思う。数年前に高校の弦楽合奏部の後輩から勧められて入ったFacebookも使い方がよくわからないまま休眠中。自分からメッセージを発したことは一度もなく、数人の後輩たちの動静を知るだけだ。そのうちの一人は有名な写真家なので、公開された綺麗な写真を見ることができるメリットはあるけれど。若い人は理屈抜きでどんどん使って覚えていく。すでにスマホは体の一部になっているようだ。年がいっていると、なかなかそうはいかないし、まして神経質だと個人情報漏洩などのリスクが心配になって、もたもたしてしまうのだ。まあ、これでいいのだ、と開き直る。

2021年9月16日 (木)

神経質礼賛 1906.ビクビク・オドオド・ハラハラ

 森田療法では「ビクビクハラハラのままで行動していこう」というように指導する。神経質人間は「自分は気が小さくていけない、もっと大胆になりたい」と願うけれども、その必要はないし、ビクビクハラハラするのは逆に長所でもあるのだ。ワーストケースを考えた上で、そうならないように注意を払いながら行動すれば、よりよく、より安全に生きていくことができる。そして、行動してしまえば、気分は問題ではない、というのが森田療法の考え方である。ただし、考えるだけで実際に行動しないと、石橋を叩くだけで渡らない、になってしまうから気を付けたい。

 ビクビクとハラハラ、似ているようだけれども違いがある。ビクビクは、これか起こることへの不安や恐怖の様をあらわす。ハラハラは、成り行きを危ぶんで気をもむことを言う。ビクビクと似たものにオドオドがある。恐れたり自信がなかったりして落ち着かないのが態度に出ることを言う。例えば、叱られないかとビクビクする。叱られてオドオドする、といった具合だ。

 当ブログで森田正馬全集から引用させていただいた部分は一つのファイルにまとめてあるが、その中では「ビクビク」が出てくるのは1回、「オドオド」は2回、「ハラハラ」は7回でハラハラが圧倒的に多い。森田先生のように神経質の達人になってくると、ビクビクやオドオドは少なく、ハラハラ気がもめながら、どんどん充実した仕事をしていくようになるのだろう。森田先生は神経質を礼賛しながらも、次のようにクギを差しておられる。

 しかし我も我もと、あまり自慢されても困る。神経質の事は、雑誌や私の著書でも、その素質を礼賛してあるが、九州大学の下田教授も、根岸病院の高良博士も、神経質の肩をもって礼賛してくれる。神経質はこのように立派でも、自慢してはかえって間違いの元になる。赤面恐怖も、も少しオドオドして、気を小さくしてもらわなければ、あまり大胆にやられても困ります。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.220)

2021年9月12日 (日)

神経質礼賛 1905.ワクチン接種騒動

 昨日の午後のこと。隣の診察室から「キャー!痛い!痛いよー!」という女の子の叫び声と足をバタバタさせる音が聞こえる。何があったのかと、看護師さんや事務職員さんが集まってくる。勤務先の病院では、入院患者さん・職員・出入りしている業者への新型コロナワクチン接種が完了し、現在はデイケア通所中の患者さん、職員家族の希望者に順次接種している。この日は母親と一緒に来た中学生や高校生が多かった。隣の診察室では院長先生がワクチンを打っていたが、まだ打つ前からふざけて大騒ぎしている中学生位の女の子がいたのである。実際に打った時にもうひと騒動あった。私の方にも、「えー、やだなあ」と言って座ったまま椅子をグルグル回す女の子が来たが、無事に済ませることができた。最近は学校の部活で感染するようなこともあるし、未成年の新型コロナ死亡例も公表されているから、特に受験を控えた中高生のワクチン接種希望が増えている。

 40代・50代位の男性からは、「今日、アルコールを飲んでも大丈夫ですか?」とよく聞かれる。ちなみに何をどれくらい飲んでいるんですか、と問うと、缶ビール(あるいは缶チューハイ)500を1本と焼酎を少し、と返事が返ってくることが多い。この「少し」が怪しい。酒飲みの人の言う酒量ほど当てにならないものはない。「今日は控えた方がいいですよ」と答えておくが、そう言われたところで多分今日も飲むのだろうな、と内心思う。神経質な私だったら2、3日はやめておくところだが。

2021年9月 9日 (木)

神経質礼賛 1904.海つぼ

 家から歩いて5分ほどの所に、用宗漁港で上がったシラスを直売している店がある。シラス関連以外にもサバの文化干やイワシやサンマの醤油干などの海産物が並んでいる。釜揚げシラスや干したちりめんじゃこも美味しいけれど、生シラスは格別だ。悪天候で漁ができなかったり不漁だったりすることもあるから貴重である。生シラスが入った時には店の外に看板が出るので、それを見たら迷わず店に入って確保することにしている。1パック350円で結構入っている。御飯の上にかければ一人分の生シラス丼ができる量である。酒肴としては3人分にはなるだろう。先日、それを買いに店内に入ったら、大きな巻貝を見つけた。千葉産・海つぼと書かれていて5個400円。店員さんに聞くと、すでに調理済みで冷凍なので、自然解凍してそのまま食べればいいとのこと。実は海つぼとは静岡での呼び名であり、全国各地で呼名が異なる。代表的にはバイガイで、バイ・ベイ・ツボ・ツブ・アズキガイ・ヨナキガイ・・・実にいろいろな呼名があるらしい。昔はその貝殻を笛にしたり独楽(こま)にしたりして遊んだという。小さい巻貝であるナガラミ(正式名称:ダンベイキサゴ)は料理屋や居酒屋の「お通し」に出たりして、楊枝を使って身を引き出して食べる。それに比べると海つぼは結構大きいので、小さいフォークで貝を回転させながら身を引き出してみる。最後のワタの部分まできれいに出せる。ナガラミに比べると味も濃厚で食べ応えがある。
 まだ外食がままならない状況が続いている。こうした手頃な価格の食材でたまにはおうちグルメを楽しんでいくとしよう。

2021年9月 5日 (日)

神経質礼賛 1903.そんな事を心配して居たんですか

 神経質の症状に関する種々の悩みは、本人にとっては極めて重大であっても、人からはまさかそんなことで悩んでいるとは思えないものである。例えば対人恐怖にしてもそうである。本人は人前でひどく緊張して周囲の人から変だと思われているに違いないと思い込んでいるけれども、そもそも緊張するのは誰しもあることだし、変でも何でもない。パニック発作のために死ぬほど苦しい思いをする人も、他人から見ればどこも悪くないように思われる。高良武久先生が神経質の症状について「主観的虚構性を帯びている」(680話)とした表現は実に的を得ている。私の師の大原健士郎教授は、入院患者さんに「(症状のことよりも)もっと悩み甲斐のあることを悩むんだよ」と指導しておられたなあ、と思い出す。

 森田正馬全集第4巻p.357-361に「腋臭恐怖患者の日記」が載っている。26歳の会社員。21歳頃から腋臭を気にするようになり、25歳の時に手術を受けている。出社前には服に香水をかけて出かけるが、電車では人に嫌な思いをさせていると思い、席には座らず立っている。会社で隣席のA氏は42歳くらいの人だが、鼻をフンとやって自分を嘲笑的に見ているような気がしてならない。日記には毎日の通勤電車や会社内での苦悩が綴られている。ついに意を決してA氏に自分の悪臭のために嫌な思いをさせていることを謝罪した。すると、A氏は「君そんな事を心配して居たんですか。決して臭ひなんか判りませんよ。君が昨年、手術する前にだつて、殆ど分からなかつた位です。そんな事を心配する事はありません」という返事が返ってきた。この言葉をうれしく思いながらも、A氏は出まかせを言ったのではないかと疑う。しかし、A氏が非常に閉口しているわけではない事は明らかだとわかる。仕事の帰り道もA氏と二人きりになり、「朝の事は、決して氣に掛けなさんな。私は何とも思つては居ないのだから。悪い悪いと思つて居るのは君のヒガミなんだ。たとへ何(ど)うだつても、平氣で居たまへ。人間は少しズーズーしくなければ、世の中は渡れないからね」と言われた。それを聞いて、A氏は我慢して居て呉れるに相違ない。誠に済まないけれども、許して貰ふ事にする、と結んでいる。

 対人恐怖は他人がどう思っているかを忖度するという意味で関係妄想性を帯びていると言えるが、この日記の人のような自己臭恐怖あるいは醜貌恐怖といった重症対人恐怖となると、自分が他人に嫌な思いをさせていると確信して訂正困難あり、妄想と言わざるを得ない場合もある。現代ならば、統合失調症に準じた薬物療法を行っていく医師も少なくないだろうが、日記指導による外来精神療法のみで解決させるところに妙味がある。

2021年9月 2日 (木)

神経質礼賛 1902.マグネットチラシ

 母が住んでいた家に週2回は行って郵便物をチェックする。広告新聞の他、宅配の寿司・弁当・ピザのチラシと並んでよく入っているのが、水道修理業者のマグネットチラシである。名刺大ほどのマグネットシールに大きく電話番号が表記され、いつでもすぐ来てくれるようなことが書かれている。私はそのまま捨てているけれども、何となく捨てずに取っておく方、何かあったときのために冷蔵庫に貼っている方もいるのではないだろうか。同じ地域でも私の家にはそれほど入ってこない。高齢者の住宅を狙って入れて行くのだろうか。母が古い実家に住んでいた頃、トイレが詰まってその業者に電話をしたら、例の大きな吸盤が付いた棒でプシュプシュやってわずか3分ばかりのことで1万円を要求されたことがあった。もちろん領収書も何も置いて行かなかったとのことだ。ぼったくりである。その業者かどうかわからないが、昨日のニュースにマグネットチラシで全国展開している水道屋本舗を名乗るアクアラインという業者に業務停止命令が出たというものがあった。直らないのに法外な料金を要求された、便器一式取り換える工事が必要と言われた、クーリングオフを認めない、などの苦情が国民生活センターに寄せられたためだという。

 振り込め詐欺もそうだけれども、高齢者を狙った詐欺や悪質商法が横行している。何か困ったことがあるとパニックになって引っ掛かりやすい。一呼吸置いてから対策を考えるのがよい。水回りのトラブルは地元のガス会社でも扱っているから、当てがなければマグネットチラシの業者ではなく、そうしたところに相談した方がまだ信用できるだろう。

2021年9月 1日 (水)

神経質礼賛 1901.糸引納豆禁

 転院してきた患者さんの紹介状と看護サマリーを読んでいたら、食事の項目に「糸引納豆禁」と書かれている。内科疾患があって抗血栓療法のためワルファリン服用中の人だから納豆禁の指示はわかるけれども、あえて糸引納豆禁とまで書かなくてもよいのでは、という考えが浮かぶ。納豆や青汁やクロレラは血液凝固に重要な役割を果たすビタミンKを多く含んでいて、ワルファリンの効果を減弱させてしまうので、服用中の人はそれらは禁忌となっている。横にいた臨床検査技師さんが「甘納豆もあるからじゃないですか」と。うーん、そこまでは考えつかなった。確かに甘納豆はまず影響ないだろう。神経質ゆえ、それでは京都の大徳寺納豆や浜松の浜納豆はどうなんだろうか、どうでもいいことが気になる。病院食では甘納豆も大徳寺納豆も出ることはないだろうけれども。

 ニプロ(株)がネット上に公開している患者さん用の「ワルファリン服薬手帳」には食品に含まれるビタミンKの量が記載されていて興味深い。100g中のビタミンKの量は、ひきわり納豆が930μgと最も高く、通常の納豆が600、寺納豆(大徳寺納豆など)は190とある。あの味噌の塊のような糸を引かない寺納豆はそれほど影響がないとわかる。緑野菜でも、パセリ850、しそ(生)690、モロヘイヤ(生)640、春菊(茹)460、バジル440と納豆並みに高いものがあるから、注意が必要である。なお、緑茶の茶葉には多量のビタミンKが含まれるがお茶として飲む浸出液には微量しか含まれないので問題ないようだ。

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