神経質礼賛 1920.優先度が高いことから実行
外来患者さんで遅刻常習者がいる。強迫の人である。午前最後の11時台の予約を入れてあるが、いつも受付に現れるのは12時スレスレ。一昨日は12時半近かった。それも、あれこれ言い訳をして「遅刻します」と事務に電話を入れてくるのだ。ただでさえ診察には時間がかかる人で、こちらも次の予定が詰まっているから大迷惑である。確認行為や儀式を繰り返しているために動きが遅くなるのだ。今まで有名な森田療法家の治療を受けてきて、理屈だけはわかっているようだが行動が伴わないからよくならないのだ。確認や儀式が全部できなくてもせめて病院を受診する日だけでも決まった時間のバスや電車に乗ることを最優先にすればできるはずだがやらないのである。
以前、「仲間とともに強迫神経症を生きる」という本をいただいている。森田療法の自助団体である「生活の発見会」の中に強迫症状に悩む人たちの生泉会というグループがある。鈴木知準診療所に入院体験のある人もいる。その人たちが自分なりに強迫への対処法の工夫を書いたものだ。強迫に加えて乗物恐怖のある人が「目的本位に考え、恐怖突入」と書いておられる文章がピッタリの処方箋である。確認したい・安心するための儀式をしたい、と思っても、それよりもっと優先すべきことを実現するために、後ろ髪を引かれる思いをしながらも不安を抱えながら振り向かずに前進するのが最善の対処法である(978,1208話)。
誰しも、今していることを終えてから次の仕事に移りたいが、働いているとそうはいかない。外来診察中でも急ぎの外線電話が入ることはあるし、調剤薬局から疑義照会のFAXにはすぐに応じなければならない。「○○さんが急に呼吸停止しました!」と病棟から呼び出されたらすぐに病棟へすっ飛んでいく。よく考えれば、主治医ではないし外来担当ではない他の医師もいたはずだが、看護師さんがあわてて私を呼んでしまったのだった。優先度の高い仕事が割り込んでくるのは気持ちが悪いが、何とも仕方がない。とにかく「ものそのものになって」処理していくだけである。
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