神経質礼賛 1937.クリニック放火事件
一昨日、外来診察を終えてTVの前を通りかかると、大阪の雑居ビルで心療内科クリニックから出火して27人が心肺停止というニュースが繰り返し流れていた。いわゆるビル診の心療内科・精神科クリニックは働いている人が通院しやすく、このクリニックのように休職中の人のリワークプログラムに力を入れている所も多い。飲食店と異なり火を使わないクリニックからどうして出火したのだろうか。その後、火災の原因は、男が入口の受付近くの待合室でガソリンのようなもので放火をしたことがわかった。今朝のニュースでは放火の容疑者は通院歴のある61歳男性だということで氏名が公表されていた。また精神科通院者への偏見が強まらなければいいが、と思う。煙に巻かれて一酸化炭素中毒などにより24人が死亡し、3人は蘇生できたものの重体で、その一人が容疑者だという。多くの通院患者さんだけでなく、医師やスタッフも犠牲になったものと思われる。大変お気の毒なことである。
大阪の雑居ビル放火というと、個室ビデオ店放火事件(356話)を連想させる。この時は、窓を石膏ボードで塞いでいて通路も狭く、火災報知器が作動しても管理人が誤報と決めつけて切ってしまい消火が遅れて被害を大きくしてしまった。今回事件のあったビルは、立ち入り調査では消防法で義務づけられた条件を満たしていたそうであるが、小さなビルでは階段は1か所しかないことが多く、その付近で火災が発生したら逃げようがない。日中の火災であり、消防の動きも早かったにもかかわらず多くの犠牲者を出してしまった。法律義務スレスレでなく、スプリンクラーや排煙メカニズムや非常はしごの設置などがあったら、もう少し助かる命もあったのではないかと思う。
仕事や買物や通院などで訪れた場所で火災に巻き込まれる可能性は誰にもある。煙が充満したら避難経路がわからなくなってしまうし短時間で一酸化炭素中毒のために命を落とすことになる。助かる可能性を高めるために、非常口や避難階段の表示に注意しておきたい。
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