神経質礼賛 1945.わらべ地蔵
週一回、外来診察のパートをしていた先生が辞められて、患者さんたちを引き継いだ。問診では必ず、睡眠や食欲について尋ねるが、私は「日中はどのようにお過ごしですか」という質問も入れている。年配の方で、「そば打ちと石仏づくりです」と答えた方がいた。「石仏は杉村さんに習っています」とも言う。藤枝の彫刻家・杉村孝さんは「わらべ地蔵」の作家として有名である。京都・大原三千院の庭園に佇む二頭身のかわいらしいお地蔵さんたちは人気がある。京都ばかりでなく全国各地のお寺で会うことができる。静岡市内の宝泰寺の庭園には多くのわらべ地蔵さんたちが住んでいて、以前書いたことがあるが、母方祖父母の法事の際に目にする。向き合ってじゃんけんをしているお地蔵さん、寝転がっているお地蔵さん、頭を抱えているお地蔵さん、大きな石を持ち上げているお地蔵さん、手を合わせているお地蔵さん、いろいろあって思わず笑みが漏れる。「それは結構ですね」と言ったら、次の時に、「心に花を」と題したわらべ地蔵の写真入りカレンダーを頂いてしまった。絵葉書になるもので、山頭火(887話)の句も入っている。私からはお礼に拙著を差し上げた。
わらべ地蔵たちの姿を見ていると「純な心」という言葉が浮かんでくる。神経質はともすると頭も体もコチコチで動きが止まってしまう。そして、嫌なことがあると、それを顔に表してついしかめっ面にもなりやすい。相手もそれを察知して雰囲気が悪くなって、結局は自分に返ってくる。森田先生が言われたように、気分はともかく挨拶はしっかりして、愛想笑いも必要である。そして、時にはわらべ地蔵さんたちのように無邪気に遊ぶのもよいだろう。
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