神経質礼賛 1986.知らないうちに眠っている
外来患者さんで不眠を強く訴える人がいる。前医が「合わない」と言って私の外来に来るようになった。前医の薬は眠気が残ってボーとすると言うので、半減期の短い薬に変えると、全然眠れないと言う。何度か薬を調整したが訴えは同じで、予約前の日に来たり、家族に頼んで電話で訴えを代弁させたりする。眠れた・眠れないはさておき、日中の行動を充実させていきましょうとアドバイスするが、眠っている時が一番幸せだから大事だ、と主張され、あくまでも眠りに固執する。気持ちはわからないでもないが、それをやっているから不眠に悩み続けるのである。
眠らないと悪影響がある、眠らなければいけない、と考えて眠ろう眠ろうとして却って眠れなくなるのが神経症性不眠の特徴である。自分は一睡もできていない、このままでは死んでしまう、とまで訴えるような人もいる。しかし、実際には知らないうちに眠っているのであり、御家族に聞いてみるとそれなりに眠っていて、本人が気づいていないだけなのである。逆に眠ってはいけないと思うと眠くなるのは、授業中や会議中に「落ちていた」経験がどなたにもあることかと思う。
私には元々不眠傾向があったが、年齢とともに夜中にトイレに起きるようになった。午前2時とか3時に目が覚めて、それから全く眠れず、そろそろ10分か20分位経ったかな、と思って時計を見ると5時近かったりする。自分では眠っていたことに気が付かずに眠っていたのだ。
神経症性不眠の特効薬は最新の睡眠薬ではない。「眠りは与えられただけとる」という言葉のように、眠ろうとすることをやめるのが特効薬なのである。
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同感です。星三つ。
昨夜は眠れませんでした。でもきっと間に眠っているのでしょう。
今日、眠れなかったら睡眠不足で、明日は眠れると思うようにしています。
投稿: レオパパ | 2022年5月16日 (月) 10時54分
レオパパ 様
コメントいただきありがとうございます。
まさに「あるがまま」であります。
投稿: 四分休符 | 2022年5月17日 (火) 19時41分