神経質礼賛 2041.森田先生と犬
今日、11月1日は犬の日なのだそうだ。「ワンワンワン」という犬の鳴き声にちなんでペットフード工業会(協会)が昭和62年に制定したのだという。1月11日の方が分かりやすいと思うのだが、そうすると、猫の日2月22日と近くなってしまうからだろうか。
森田正馬先生も犬を飼っていたことがあり、面白い記録がある。
余がペトといふ子犬を飼つて居た時の事である。様々のいたづらはする、勉強の邪魔にはなる、中々世話が厄介になツたので、幾度びか妻と相談・協議・譲歩・妥協の結果、終に意を決して、之を捨てようといふ事になツた。
或日の事、余は妻と共に、買物の序に、この犬をフロシキに包みて、町はづれに行き、一間ばかりの川で、犬の渡る事の出来ぬ向側の岸に、投げやりて、逃げ帰ツたのである。
家に帰りて後、妻と余と、誰からいひ出したともなく、「可愛想な事をした」といふ事になり、もう日もくれかゝツて後に、両人共に、再び其犬を探しに出かけた。固より其同じ處に居よう筈はない。しほしほと帰ツて見れば、ペトは独り先に帰ツて居て、余等を見るや、飛びつき・からみかゝりて喜ぶ事限りがない。余も亦之を抱きしめ・頬ずりして、歓喜したのであツた。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.523)
最後はちょっとほろりとさせられる話である。このペトがその後どうなったかは記録がない。おそらく忠犬ハチ公のような犬ではなかったであろうと想像する。
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