神経質礼賛 2040.「お江戸日本橋」歌詞の謎
先日、TV番組で、鶴見の「よねまんじゅう」の店が紹介されていた。鶴見は東海道五十三次の宿場ではないが、宿と宿の間の休憩場所として、特に「大山詣」の時期は賑わっていたそうである。よねまんじゅうとは薄い羽二重餅で大きな餡をくるんだお菓子で、最盛期には40軒の店が並んでいたという。甘味は歩き疲れた体を回復させるのには最適で人気があったのだろう。
うん、確かに「お江戸日本橋」の歌にあったよなあ、と中学の時の音楽の教科書を引っ張り出してみると、二部合唱に編曲された楽譜が載っていた。中2の教科書だから低音部は声変わりした男子を想定している。最初の4小節はユニゾン(同じ旋律)、その後は1小節ずらした輪唱に仕立ててある。歌詞は1番と2番である。
1 お江戸日本橋七ツ立ち 初のぼり
行列そろえて あれわいさのさ
コチャ高輪夜明けて 提灯消す
(こちゃへ こちゃへ)
2 六郷渡れば 川崎の万年屋
鶴と亀との よね饅頭
コチャ神奈川 急いで程ヶ谷へ
(こちゃへ こちゃへ)
ふと、思ったのは、この歌は東海道五十三次全部が入っているのではないか、と。知りたがりの神経質ゆえ、調べてみるとやはりそうだった。18番くらいまであるらしく、最後は草津~大津~都入りで終わっている。歌詞は宿場の名や名所・名物を織り込んだ歌詞ながら、ちょっとHな春歌的なものである。上記の歌詞2番とされているのは本当は3番であり、2番は次の通りである。
恋の品川 女郎衆に袖引かれ
乗りかけお馬の 鈴ヶ森
コチャ大森細工の松茸を
(こちゃへ こちゃへ)
この歌詞ではさすがに教科書検定で物言いがつきそうだ。生徒から「どういう意味ですか」と質問されようものなら教師はとっても困るだろう。外したのも無理はない。4番以降もそうしたものが多くみられる。そもそも、「こちゃへ こちゃへ」は遊女たちの客引きの表現だ。江戸時代は性について大らかだったが、今の時代ではセクハラソングと言われかねない。ともあれ、「酒もぬまづに原づつみ」というようにダジャレが効いて、なかなか楽しい。昔は東海道を歩いて旅した人も、旅に出られない人もこの歌で大いに楽しんだのだろう。皆さんがお住まいの地・あるいは知っている地がどのように歌われているか一見をお勧めしたい。
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