神経質礼賛 2033.仙厓のすべて
ここ3年間、県外の美術館には全く行っていない。県外に出たのはわずかに精神保健指定医の講習会だけである。現在、東京の出光美術館は「仙厓のすべて All About SENGAI」という企画展を開いている。初公開の画もあるそうだ。これは是非とも見に行かなくては、と思っていたら、10月4日のBS日テレ「ぶらぶら美術館」で放送してくれた。
仙厓(90・238・1033・1556話)と言えばヘタウマのユーモア溢れる禅画で知られている。元は狩野派絵師顔負けの作品も描いていた。しかし、この絵は素晴らしいけれど、あなたは雪舟(のように単なる画家)になってしまいますよ、と有名な絵師に言われて、禅の世界を伝えることを目的とした作風に変えたのだそうだ。
座禅蛙の画には「座禅して人が佛になるならハ」と書かれている。座禅もただぼんやり座っているだけでは役に立たない。座っているだけなら蛙は生まれながら座っているのだからとっくに仏になっているはずだ、と皮肉っている。以前にも書いた「〇△□」の画は英語ではUniverseという題名が付けられていて有名であるが、何を表しているのか諸説あって面白い。仏教の三つの宗派(例えば禅宗、真言宗、天台宗)を表しているという説もある。実際には左から□△〇の順に描かれていて、墨の濃さは左から右に行くにつれて濃くなっていて、これもいろいろな意味が考えられる。仙厓自身、自分はまだ△・・・修行中であり、〇・・・悟りには至っていないということを手紙に書いているそうだ。指月布袋画賛は見ている者をほっこり和ませてくれるが、月を指さす布袋さんの画には月が描かれていない。その描かれていない月は悟りの世界、それを指し示す布袋さんの指は経典を表している。そして、経典だけ読んでいても悟りは見えてこないことを暗示しているのだそうだ。
海賊とあだ名された出光の創業者・出光佐三は大胆不敵な人物と思われているが、実は神経質な性格に悩んでいて(689話)、仙厓の画を見ては励まされていたという。仙厓の作品のうち約3分の2にあたる約1000点は出光美術館が所蔵している。残念なことに常設展示はなく、1~2年に1回ある企画展で公開されるだけである。これらの画に会いに行こう。
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