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2022年11月27日 (日)

神経質礼賛 2050.「あるがまま」あるある

 高良興生会・森田療法関連資料保存会から勤務先にお手紙を頂いた。開封してみると、年2回発行されるニュースレター「あるがまま」の原稿依頼だった。私のようなずっこけた人間が書かせて頂いてもいいのだろうか、と思いながらもほぼ反射的に承諾しますというメールを送ってしまった。年末年始の宿題になりそうである。

 あるがままは森田療法の基本理念としてよく知られている。そして、とても響きが良い言葉である。それだけに誤解もされやすい。
 不安神経症の患者さんで、不安になると、「あるがまま」「あるがまま」と唱えています、という方がいた。森田療法は宗教ではないので、念仏や題目と異なり、いくら唱えても残念ながら御利益は期待できない。不安なまま一歩踏み出して実際に行動していくことが大切だ。
 対人恐怖の患者さん。「今日は気分が乗らないからあるがままに休んでいます」と。これは完全にあるがままの誤用である。保養と怠惰は似て非なるものである。気分は気分としてやるべき行動をする、それが森田療法のあるがままなのだ。
 強迫神経症の患者さんで、作業に熱心に取り組む人がいた。いいかげんに作業している人を批判し、怒りをぶつける。「早く症状がなくなるように作業しています。あるがままになれるように努力しています」とのこと。一見、森田の優等生に見えるけれども、作業は症状をなくすためにするのではない。生活に必要だからするのである。そして、あるがままになろうとすればするほど、皮肉にもあるがままから遠ざかっていく。あるがままではなく「かくあるべし」になってしまっているのだ。行動本位の生活態度が身についた時、結果的にあるがままになっているのである。そして、ただ言われたことをやっていく「お使い根性」ではなく、創意工夫をこらしてよりよくできるようにしていくとなれば、「仕事三昧」になってくる。もはや上等の人となっているのである。

 

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コメント

四分休符先生

 鈴木知準診療所にて。40余年前です。
いつもいつも我がテリトリーよろしく同じ場所を掃除する彼女がいました。「あるがまま」多分、入院生の我々の殆どはその意味がわかっていなかったように思いいます。
 彼女は黙々と掃除をしていました。或る日彼女が言いました。「お金が続かないから帰って来い、とお父さんにいわれた」と。彼女は広島へ帰って行きました。

 私23才、彼女37才でした。
 私は異例の10日間の臥辱を経てオロオロしていた時期の事でした。

 今でも「あるがまま」と言われても多分、私は解っていないと思います。今、掛かっている先生には「良いんじゃない、生活出来ているから」とニコッとされます。

 つい先日の事。「笹子トンネルは運転代わってね」そう言っていたのに、え!?思いがけずトンネルに突入。ワーッ!ギャー!言いながら抜けました。
 とてもとても疲れました。都夫良野トンネル、笹子。長い閉塞感はダメなのです。
 ダメッ。あるがまま。それは、やはりダメです、私。

yukimiya 様

 コメントいただきありがとうございます。

 たとえ「ワーッ!ギャー!」であっても長いトンネルを運転して通り抜けた、という事実、それだけで十分です。事実唯真です。プロセスは問題ではありません。私も主治医の先生と同じことを言うだろうと思いますよ。

四分休符先生

 有難うございます。プロセスは問題無い、ですか...

 処で、作務=掃除をすれば治る、そのくらいにしか理解していなかったのです。ですが、テリトリーを決めて掃除をするのでは無く、あちこち隈なくみればきれいなようでも小さい塵に目が留まる、それが作務と同化する事であり、今を生きる事と思うようになりました。
 永平寺さんで修行僧が来る日も来る日も雑巾掛けをスピィーディーに行っていますが、これは考える余地無しに身体が動く、を目的としているのでしょうか...

 体得するという事があるがままなのかな、とふと思います。

 まもなく12月1日。臘八接心を迎えます。私は例年通り多分8日間の暁天坐禅をすると思います。最終日は参禅会のお仲間と合流する予定ではいます。コロナ渦で臘八接心もイレギュラーになっています。寺方の予定は必ずしも8日間ではない、のです。
 坐るという事にあまり重きを置かなくなっている私がいます。日常生きて生活している、生きている事自体に禅の精神が詰まっていると感ずる私がいます。

 あるがまま。

yukimiya 様

 「お使い根性」でただ作業するのではなく、状況を観察してよりよく作業していくのが「上等の人」です。時間が限られている時には、細かいところまで完全にやるのではなく、全体を見て優先度が高い所を重点的にやっていくという柔軟さも必要です。
 以前書いたように歩歩是道場(1676話)です。

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