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2022年12月 1日 (木)

神経質礼賛 2051.グレン・グールド生誕90周年・没後40周年

 先週の土曜日、家に帰ると、妻が今からちょっと買物に行ってくると言う。こんな時間に?と思うが、FMで「アート・オブ・グールド~孤独のピアニストの肖像~」という番組を2時から6時までやっているのをつい聞いてしまって買物に出られなかったと言ってそそくさと出かけていく。鍋の中にはこれから麻婆豆腐になるであろう挽肉と豆腐が入ったままである。わが家の麻婆豆腐はカレーのように皿に盛り、御飯と一緒にスプーンだけで食べる。ナスも入っていて、茹でたチンゲン菜も載っているからスタミナ料理として大歓迎である。買物から帰った妻が急いで作ってくれて、「先に食べていて」と言うので口にするが、「?」。いつもとまるで味が違う。妻も食べ始めて「何これ?まずい!」と。いつも入れている中華だしと味噌を入れ忘れていたという。グールドがわが家の麻婆豆腐に影響を与えるとは・・・。

 私がグールドを知ったのは高校生の頃。FM放送で初めて聞いたバッハのゴールドベルク変奏曲(最初のモノラル録音)に強い衝撃を受けた。繰り返しなし、ものすごく早いテンポ、独特な装飾音、弾きながらのハミング、バッハってこんなに自由に演奏していいんだ、と驚いた。そもそも不眠症治療のために作られたという話のあるゴールドベルク変奏曲だが、これでは楽しくてますます不眠になってしまうではないか。晩年の再録音ではテンポは遅くなっているが、味わい深い演奏になっていて、これまた魅力的である。

 翌日、私もネットの「NHKらじる★らじる」の聞き逃し配信を聞いてみる。グールドは種々の奇行で知られている。今回の番組のゲストの一人、ピアニストの熊本マリさんが若い頃グールドのマンションを訪れて少しだけ会えた時の話をしてくれた。追っかけのファンが多いので、逃れるためにいくつかのマンションを移動して暮らしていたそうだが、やはり神経質そうな人だったという。後で、マネージャーを通して、電話でメッセージをもらえたそうだ。人間嫌いと評されがちだが、本当は人との繋がりを求めている人だったと思われる。夏目漱石を愛読し、死の床には『草枕』が枕元にあったという話も紹介された。食べ物にはとてもこだわり、いつもビタミン剤や抗生剤を飲んでいたという話も伝わっている。グールドの名演奏も実は神経質のなせる業だったのかもしれない。

 

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コメント

四分休符先生

 当該番組は初っ端のみリアルタイムで聴きましたが。10月6日よりグレン・グールドのドツボに落ちまして、私。そろそろ抜け出さねば、と思っている所です。

 40年前の衝撃。

 彼の足跡が、どこまで真実か解りませんが、彼の場合、紙一重の狂気ではなかったのではないだろうか、と私には思えてなりません。神経質。そうなのだろうか...

 天才はいない、努力だ。とよく言われますが、どうなのでしょう。

 グレン・グールドのバッハ。ゴールドベルク。

 他の作曲家の演奏を聴いてコケましたが。

yukimiya 様

 コメントいただきありがとうございます。

 「他の作曲家の演奏」の中でモーツァルトのピアノソナタイ長調K.331の第3楽章いわゆる「トルコ行進曲」には本当にずっこけました。でも、こういう演奏もありだな、と楽しく聴きました。ヒンデミットとかシェーンベルクの曲の演奏はピッタリという感じでしたが。

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