神経質礼賛 2048.いい夫婦の日
明日11月22日は語呂合わせから「いい夫婦の日」とされている。似たもの夫婦という言葉がある。考え方や性格がよく似ている夫婦ということだ。現代ではお互いに好きあった者同士が結婚するので、価値観や生活習慣などで共通点がある方が結びつきやすい。半面、自分にない部分に惹かれる、ということもあるかもしれない。以前紹介したことがあるが、形外会の場で劇作家の倉田百三が「神経質同士の結婚はよくないようですね」という発言したのに対して森田先生は次のように答えている。
それはそうです。神経質同士は、お互いにその心持がわかり、心の底まで見透しているから、互いにその欠点を挙げあって、相手ばかりにそれを改良させようとする。グジグジといつまでも、しつこく言い争いをする。
またヒステリー同士でも、これもいけない。喧嘩が早くて始末にいけない。
また陽気の者同士もいけない。気が軽くて家のしまりができない。およそ結婚は、気質の異なった人が、うまく組み合わされるとよい。
神経質の人は、気の軽い大まかな人と結婚するがよい。すると気の軽い人は、あの人はどうせ気難し屋だからといって大目に許し、また神経質の方では、どうせあれには、難しい事をいってもわからないといって、あまりやかましくいわなくなる。お互いに許し合うから円満になる。 (白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.729)
森田先生自身は親が決めた、いとこ同士の結婚だった。思いつくと突っ走ってしまう森田先生は中学生の時に家出して東京で自活しようとして失敗している。さらに中学卒業後の進路について父親と意見が合わず、大阪で病院を経営していた土佐出身の大黒田龍から奨学金をもらって第五高等学校へ進学することを自分で決めた。しかし、大黒田龍の養子になるという条件があったことを父親に隠していた。これが発覚したため、父親としては学資を出す代わりにいとこの久亥と結婚することを条件とし、森田先生は承諾したのだった。父親としては、いずれ家を継いでもらいたいという希望があっただろうし、しっかり者の久亥さんに森田先生の暴走を防いでもらおうということも頭のどこかにあったかもしれない。二人の間では夫婦喧嘩が絶えなかったことは以前にも書いた通りである(2023話)。しかし、「余の療法」「特殊療法」(森田療法)に久亥さんは欠かせない存在だった。生活を共にし、お互いを支えあい、森田療法を完成させていくという共通の目標に向かって歩んでいるうちに、晩年には似た者夫婦・いい夫婦になっていったのではないかと思う。
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