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2022年12月18日 (日)

神経質礼賛 2056.薬の出荷停止

 今、精神科の外来で処方できない薬が出て困る、という現象が起きている。以前にも大手ジェネリック薬メーカーの不正が発覚して生産停止となり、一部の薬が処方できずに困る事態はあった。今回は、原料を供給している海外のメーカーが、その国の政策で新型コロナ関連薬の生産に注力することになったため、供給がストップしているのが原因である。供給停止となっているのは田辺三菱製薬・吉富薬品のビペリデン塩酸塩という抗パーキンソン薬だ。あまりなじみのない方が多いと思うが、古くから統合失調症治療薬の副作用止めとして使われている。統合失調症の治療薬は幻覚妄想を抑えるためにD(ドーパミン)2という受容体を遮断するが、そうなると手の震え、筋固縮、流涎、すくみ足などのパーキンソン症状が出やすくなるので、それを防ぐ薬として用いられている。最近の抗精神病薬は以前のものに比べて副作用が軽くなっていて、抗パーキンソン薬なしでも使えることが増えているけれども、古くからの患者さんだと処方薬を替えにくく、どうしてもその薬が必要な場合がある。調剤薬局の在庫が厳しくなっていて、薬剤師さんからは減量あるいは中止して下さい、と言われているが、急に止めるわけにはいかないので、とても困っている。患者さんとよく相談して、減量・中止できそうな人だけそうしている。同じ会社のヒベルナ(一般名プロメタジン塩酸塩)もやはり出荷制限がかかっている。ビペリデンと同様、抗パーキンソン薬であるとともに、抗ヒスタミン剤でもあり、風邪薬の鼻水止め成分である。

 漢方薬でも在庫切れのため処方できなくなっている薬があり、精神科で時々処方する柴胡加竜骨牡蠣湯が処方不能となっている。葛根湯が新型コロナ感染症の症状軽減に役立つというようなことが言われて、一部で品薄になっているという話も聞かれる。

 医療費削減のためジェネリック薬への切り替えが進んでいるが、安く作るために海外からの原材料輸入に頼ることになり、急に何かの事情でそれがストップすると生産停止になってしまい、その薬を使っている患者さんが困ることになる。食料品と同様、薬も国内での自給率を高める必要があると思う。

 

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