神経質礼賛 2066.パキる
ネットのニュース記事を読んでいたら、「グリ下でパキる」という表現があって、はて、何のことだろうと疑問に思った。SNSで居場所を求めて集まってくる少年少女たちの話であり、「グリ下」とはグリコの看板で有名な大阪ミナミ戎橋の下の遊歩道を言い、新宿歌舞伎町の「トー横」に相当するらしい。そして、「パキる」とは抗うつ剤パキシル(パロキセチン)を服用する、さらには広く精神科薬を過量服用(OD:オーバードーズ)することを言うようだ。
パキシルはうつ病・うつ状態・パニック障害・強迫性障害・社交不安障害の治療薬であり、強い効果がある反面、減量や中止時の反動が大きく、やめにくいという問題点がある。古いタイプの抗うつ薬に対してこうしたSSRIと呼ばれる薬は比較的副作用が少なく、現在では精神科以外の科の先生方もうつ症状だけでなく不安症状に対して気軽に処方されるようになっている。しかし、私は当ブログ開始当初から、その問題点を書いて警鐘を鳴らしてきた(20話・102話・684話、拙著p.58-60)。不安は誰もが忌み嫌うけれども、私たちが危険を避け安全に生きていくために必要不可欠な安全装置でもある。自動列車停止装置ATSを切って電車を走らせたら危険極まりないのと同様、不安がなくなったら無謀な行動や浪費をきたしたり暴言を吐いて周囲の人とトラブルを起こしたりする可能性がある。ましてや過量服用の害は言うまでもない。医療者の側も抗うつ薬の安易な処方は避けたいものだ。
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